Ⅳ ベスト仮装コンテスト
そしてパーティーも中盤に差し掛かり、ベスト仮装コンテストのファイナリストが発表された。
「エントリーナンバー8! 俺たち、ファイナリストに選ばれたぜ!」
ライリーがグッと拳を握る。
「じゃあみんなで舞台袖に移動しましょ」
「……」
マリルーについて皆が笑顔で歩き出すが、一人エドウィンは当惑した顔で後からついて行った。
舞台袖にはファイナリストである十数組のグループが集まった。
「ほえー、ファイナリストになるだけあって皆、すげえな」
ライリーがライバルたちの凝った仮装にキョロキョロする。
「では、これよりベスト仮装コンテストを開催します! エントリーナンバー1番のグループはステージにどうぞ!」
司会の声が高らかに響き、ナンバー1のグループが壇上に上がった。
ファイナリストたちが次々とパフォーマンスをこなしていき、ついにエントリーナンバー8・エドウィンたちのグループの番になった。
「いい? エド、オーバーな演技はしなくていいから。そのままでも十分いい線いってるわ」
司会に呼ばれたとき、マリルーが兄に素早く耳打ちし、五人はぞろぞろと登壇した。
「では、右端の方から順にパフォーマンスを、どうぞ!」
司会の合図とともに、大きめの赤い頭巾を被ったベティが勢いよく一歩前に出た。バスケットをお腹の前に持ち直し、とびきりの笑顔で手を振ると、会場から『可愛いー!』と歓声が上がる。
続いてララが頭の猫耳を揺らしながら、ピンヒールをカツカツと鳴らしてしなやかに前へ出た。そして観客に向かって爪を立てたシャープなキャットポーズを決め、『にゃん』と言ってペロリと小さく舌を出した途端、会場全体がどよめく。
マリルーは緩いウェーブ髪をふわりと揺らしながら中央に進み出ると一礼し、優雅に杖を振った。魔法をかけるかのように観客席に突き出して、ドキュン♡と効果音が聴こえそうな、魅惑的なウィンクを飛ばすと、会場から『おぉ……!』とため息混じりの歓声が上がる。
ライリーは『次は俺だ!』とばかりに、前に出るとカウボーイハットのフチを持ち上げ、キザにサムズアップを決めて会場の笑いと拍手をさらう。
──そして、最後。順番が巡ってきたエドウィンは、ゆっくりとステージ中央へ踏み出した。妹の助言通り、腰のホルダーからイミテーションの短剣を静かに抜き放ち、目の前の敵と相対しているかのように構える。その瞬間──エドウィンから放たれたのは、息を呑むほど危険な海賊の色香だった。
一瞬の静寂の後、『キャーーッ!!』と会場中に響き渡るような黄色い悲鳴と大歓声が湧き起こった。
結果として、歓声判定により、エドウィンのグループは優勝した。その賞品としてメンバー全員に大学の購買部で使えるギフトカードが贈られたのであった。
表彰式を終えた後もパーティーは続き、最後のダンスタイムではクラブミュージックが流れる中、皆でリズムに乗って体を揺らす。
「へーい!」
そんな中、ハイテンションになったライリーがふざけてマリルーの片手を取り、彼女の頭の上に持ち上げて回転させる。
「ふあっ!?」
マリルーは驚いたものの、すぐに合わせてライリーの肩に片腕を回し、彼に腰を支えてもらい、互いが空いた手をジャーン! という風に左右斜め下へ伸ばして決めポーズを取った。それを見た他の三人は心から楽しそうに笑う。
……そしてダンスタイムが過ぎ、ついにパーティーは終わりを迎えた。
「……あっ、ユリウスさんからLINEが来てた」
友人たちと別れた後、マリルーと車に乗り込んだエドウィンはスマホを確認してユリウスからのメッセージに気づいた。
Julius:海賊衣装の写真、ありがとう。とても素敵だ。今夜のパーティーで君に見惚れる者がいたのではないかと心配になる。仮装した君がこんなに魅力的だと知っていたら、他の誰にも見せたくなかったのだが。これからは私の前でだけ着るようにしてくれ。愛しているよ
「……」
「ん? どうしたの、エド。あっ、ユリウスさんからね。……あちゃー、せっかく高い衣装を買ったのに、これじゃ来年は着れないかな」
兄のスマホを覗き込んでマリルーが言うと、エドウィンが彼女を見た。
「……お前、ユリウスさんに俺の写真、送ったのか?」
「ええ。送るって言ったじゃない」
悪びれずに言うマリルーにエドウィンは溜息を吐いた。
「……もういい。帰ろう」
エドウィンが車を発進させる。二人は星の瞬く夜空の下、ハーバータウンへの帰途に就いた。
~終わり~




