Ⅱ 待ち合わせ
ハロウィン当日・夕刻。双子はライリーと大学の駐車場で待ち合わせたのだが……
「おわっ!?」
二人が車から降りると、エドウィンを見てライリーは驚いた。
「な、な、エド! お前、それ反則だろ!?」
ビーズの装飾を垂らしたダークレッドのバンダナ、海賊帽子、くすんだ白のシャツにノースリーブの黒の上衣、ゆったりした黒のズボン、ブーツ、古びた革のベルトに大きなペンダント、シンプルな模様のリングと、映画に登場する海賊さながらで、普段のエドウィンとはかけ離れた危険な魅力に溢れていた。
「え……何が?」
「何が……って。勘弁してくれよ……お前と並んで歩いたら、俺、ピエロだよ……」
一方ライリーはと言えば、赤と茶のチェックシャツにデニム、焦げ茶色のチョッキとカウボーイハット、ブーツ、首元に柄物の赤いバンダナを合わせていた。
「ピエロ? カウボーイの仮装じゃないのか?」
真面目な顔で首を傾げるエドウィンにライリーは、
「あーーっ!! そうじゃなくて!」
と苛立たしげに頭を振った。そこへ、マリルーがそっとライリーの肩に手を置く。
「ライリー、あなたも十分イケてるわよ。とりあえず、パーティー会場に向かいましょう」
ライリーがふとマリルーを見ると、背中と胸元が開いた黒いレースとベルベットのドレスの、強調された胸の谷間が目に入って思わずゴクリと息を呑む。今、彼女は普段のポニーテールではなく、髪を下ろしていて、緩くウェーブがかけられている。首元にはペンダントヘッドのついた黒のチョーカーを留め、とんがり帽子を被っていた。
「あ、ああ。そうだな……」
ライリーは黒いドレスによって白さが際立つマリルーの素肌に目が釘付けになり、結果として落ち着きを取り戻した。
「さ、行きましょ!」
マリルーは楽しそうに二人を促して大学の方へと歩き出した。
「ホールのエントランスで友達と待ち合わせているの」
歩きながらマリルーが話す。パーティーはホールで行われることになっていた。
「学生寮の子?」
エドウィンが尋ねた。駐車場で待ち合わせなかったということは、車で来ていないのではと思ったからだ。
「そうよ」
案の定、マリルーが頷くと、今度はライリーが興味を示した。
「その友達って女の子?」
「ええ」
「やった! 女の子と友達になれるかも!」
ライリーは途端に上機嫌になり、鼻歌まで歌い出した。双子はそんな彼に少しばかり苦笑する。
やがて三人はホールに着いた。既に多くの学生たちが集まっている。
「ルー!」
エントランスの端で赤ずきんちゃんの仮装をした金髪の女の子がこちらに向かって手を振っていた。マリルーは手を振り返してそちらに向かう。
「ベティ、こんばんは。こちら、同じ学科の友達のベティよ。こちらは私の双子の兄・エドウィン、隣が兄の友達のライリー」
「教育学部一年のベティです、よろしく」
「経済学部一年のエドウィンです。エドと呼んでください」
「同じくライリーだ。よろしく」
それぞれが自己紹介し終えると、マリルーは周囲を見回した。
「ララはまだ来ないのかしら?」
「まだ見てないわ。もしかして連絡がきてるかも」
ベティとマリルーが自身のスマホを取り出して確認すると、
Lara:今、会場に着いた!
というLINEが来ていた。時刻は十分前。
「おかしいわね。十分前には着いていたはずよ。何かあったのかしら……?」
そのとき、マリルーの脳裏に数日前のララの会話が蘇った。
『ハロウィン・パーティーにはとびきり気合いを入れたピンヒールを履いていくの!』
「ピンヒール……」
マリルーははっとして付近の絨毯へ注意深く目を凝らした。……すると。
「……あった」
絨毯の上に落ちていた、小さな黒いヒールのトップリフトを摘まみ上げる。
「きっとトップリフトが取れちゃったんだわ。今頃、レストルームで途方に暮れているかも」
「行ってみよう!」
マリルーとベティはともにレストルームへと足を向ける。エドウィンとライリーは女性用レストルームには入れないため、その場で待つことにして二人を見送った。
マリルーの推理通り、ララはレストルームにいた。会場に着いた直後、靴のトップリフトが取れてしまい、見つけることができず、ひとまずレストルームにやって来たのだという。マリルーとベティに連絡しようとした矢先に、二人がやって来たとのことだった。
「ふふ、同じくヒールを履いて来た私としては、こんなこともあろうかと応急修理用ボンドを持ってきているのよ」
マリルーが得意げに言い、ララのピンヒールのトップリフトを手際よく固定して直すと、三人で兄とライリーが待つエントランスへ戻ってきた。
「初めまして、ララです。迷惑かけてごめんなさい」
「エドウィンです。直ったようでよかった」
「ライリーだ。それは……キャットウーマンの仮装?」
ライリーはララが身に着けている黒のぴたっとしたボディスーツに猫耳、ピンヒールという出で立ちを見て、訊いた。
「そうよ。けれど慣れないピンヒールなんて履くものじゃないわね」
ララはちょっとバツが悪そうにペロ、と舌を出し、皆が笑う。
「まだ乾杯まで時間があるわ。せっかくだから写真を撮りましょう」
マリルーが言い、通り掛かった人に頼んで五人一緒の写真を撮ってもらい、順番に一人ずつのソロショットも撮影した。集合写真は写っている皆に、ソロショットは本人に送る。そしてメイには自分と兄のソロショットを、ユリウスに兄のものをこっそり送っておいた。




