えくすとら 藍染Days
今回の番外編は藍染です。
春香、ではなくて藍染です。
色々有った3泊4日の海水浴も終わり、遂に帰宅日。
夏休みを満喫した俺達は、七海以外はそこそこ日焼けしている。
聞き慣れた波音とも今日でお別れだ。
荷物を持ち、ホテルのロビーで出発を待っていると、スマホで誰かと通話していた藍染が、俺に耳打ちした。
「あのさ、帰り道に一人同乗者が増えてもイイかな?」
「俺は構わないけど⋯何故に俺に?」
「お父さんがりっくんに会いたがってるんだよね」
聞き間違い?
お父さん、と聞こえた様な?
「え?」
「お父さん」
「それって、もしかして藍染の?」
「そりゃそうだよ! 何言ってるのりっくん」
藍染は吹き出した。
いや、俺は“藍染財閥”会長の、と聞きたかったんだが⋯まぁ結果は同じだな。
藍染に結婚を申し込んだ以上、いつかは来る日だとは思っていた。
思ってはいたが⋯。
「ちゃんと家に伺って挨拶するつもりだったんだけど、良いのかな」
「丁度仕事でこっちに来てるんだって。お父さんが言い出した事だから、気にしないで」
「それなら、勿論大丈夫」
「良かった。お父さん、りっくんに会いたがってたから」
「え、それって?」
「んー、何というか⋯会えばわかるよ」
藍染はちょっとイタズラっぽい笑いを浮かべた。
ふ、不安だ⋯。
そして空港の待合室。
藍染は専用のVIPルームを持っている。
そこで俺は遂に藍染の父親と対面した。
「おお、君が律斗君だね! 」
現れた藍染の父親はスーツをバリッと着こなし、大股で颯爽と俺の前に来た。
そして俺の顔を見て、
「ほ、本物だっ! ありがたい!」
と、声を上げた。
「え、えと?」
突然の事にどう反応してよいか戸惑う。
「し、失礼。 つい興奮してしまい」
藍染の父親はそう言って襟元を正した。
「は、始めまして。須藤律斗です」
「初めて? いや、初めてでは無いよ?」
言われて改めて藍染父の顔を見る。
確かにどこかで見た⋯あれ?
「あ、確かに。昔に病院で何度かお会いしました」
この病院と言うのは、子供の頃に俺が骨折して入院していた時の事だ。
「む、昔⋯まぁ若い君達には10年前なんて昔か。覚えていてくれて嬉しいよ。春香の父の剛州だ」
剛州さんは握手をしながら言った。
「早速で申し訳ないが、一つ頼んで良いかな?」
「はい?」
「一緒に写真良いかな? 妻に自慢したくて」
「構いませんけど??」
イマイチ意図が分からず戸惑う。
「妻も私もリツトの大大大ファンなんだ。発表会での演武は何度も見直してて。それで⋯いや、ゴホン」
剛州さん、最後に咳払いして体裁を整えて無いか?
「“ファンタズム・ワールド”ご存知なんですか?」
「そりゃ、ウチの企業がタイアップしてるゲームだからね。 勿論知っているさ。それに⋯」
「それに?」
剛州さんは俺の耳元に顔を寄せ、
「春香には内緒だが、最近、私も始めたんだ⋯」
そう耳打ちした。
「えっ?」
まさか、財閥の会長自ら?
「まだまだレベル上げの途中だがね。IDを教えるから、今度、チーム戦でも⋯」
「えっ、そ、それはもちろん⋯」
そこへ藍染が様子を見に来た。
「お父さん、りっくん、挨拶は終わった?」
「あ、ああ、もちろんだよ」
答えながら、剛州さんは俺にだけ分かるように、ウィンクをして見せた。
先の話は内緒にしておこうと言う合図だろう。
な、なかなかフレンドリーな父親だな。
剛州さんは俺達2人に向き直った。
「私は、律斗君には本当に感謝しているんだ。君と会ってから春香が明るくなったし、治療にも前向きに成ってくれた。命の恩人とさえ思っているよ」
「そ、それは大げさです⋯」
「それで、どうだろう。卒業したらその場で式を挙げると言うのは⋯」
「そ、その場って、学校で?!」
「お父さん?」
とんでもない提案に俺と藍染が同時に声を上げた。
「だ、駄目かな⋯私としては早く孫の顔も見たいんだが」
「えっ、それは⋯」
俺は戸惑った。
藍染は治療に使った薬の影響で子供が⋯。
その様子を見て、剛州さんが藍染に尋ねる。
「なんだ、まだ言ってなかったのか?」
「だって、言うチャンスが無かったから⋯」
そう言うと藍染は俺のそばに来て、恥ずかしそうに俺の顔を見た。
「⋯産めるって」
そう言うと胸に顔を埋めた。
「えと?」
「先生も奇跡だって⋯」
「それじゃ」
俺は藍染と剛州さんを交互に見た。
言葉の意味は分かる。
でも確証が欲しい。
それは本当に大切な事だから。
「これも、律斗君が早めの治療を勧めてくれたおかげだ」
剛州さんはそう言って、俺の肩をポンポンと叩いた。
「良かった⋯良かった」
思わず藍染を強く抱きしめた。
ずっと気になっていた。
藍染を助けるためとは言え、リスクのある治療を頼んだ事に。
これで良かったのかと、何度も自問した。
「も、もう、りっくん、苦しいよ⋯でも、ありがと」
藍染も俺を抱きしめた。
そして顔を上げると、
「やっぱり学校で式、挙げちゃおうか?!」
そう言って笑った。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
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