えくすとら4
外伝話その4です。
もうすぐ夏休み、ですね。
夏休みと言えば、これでしょう
「ミツキが居ない? 部屋で充電していたんじゃ?」
「それが‥どこにも居なくて」
ホテルの部屋に駆け込んで来た美月は言った。
「本人に聞いて見れば‥」
俺はスマホを取り出し、梅澤さんに電話してみる。
梅澤さんの所でVAのコンソールからミツキに連絡してもらおうと考えていた。
が、
『あ、律斗さん! 丁度こちらから連絡しようと‥』
むしろ梅澤さんが慌てていた。
「? 何かあったんですが?」
『それが‥ミツキがスリープから回復しないのです』
梅澤さんの背後で何か騒いでいる様子が聞こえる。
あちらもかなり混乱しているらしい。
「つまり意識不明、ってことですか?」
『はい、それでそちらの人形ならどうかと‥』
「それが、こちらも行方不明なんです」
『え?』
「部屋でスリープして充電しておいたらいつの間にか‥」
『わ、分かりました。そちらでも捜索お願いします』
そう言って電話は終わった。
やはり尋常の状態では無いようだ。
「あ兄ぃ?」
美月が心配そうに尋ねる。
「向こうではミツキがスリープから回復しないって」
「え、それって」
「偶然、では無い‥よな」
一応、状況を確認するため、美月達の部屋に行って見る。
コンセントを確認すると、充電器自体は残っている。
「誰かが持ち去ったか、自分でスリープから回復して移動したか、だな」
「鍵は掛かっていました‥」
藤原さんがルームキーを見せながら言った。
「部屋に入れるのはホテル関係者位か‥考えにくいけど‥」
「一応、確認はしましたが、入室したスタッフは居ないようです」
「だよな‥」
スリープしているミツキは単なる熊のぬいぐるみだ。
知らない人間がわざわざ持ち出すとは思えない。
「てことは自分で‥?」
何かのきっかけでスリープが解除された?
だとしても勝手に出ていくだろうか。
書き置き位はしていっても良さそうだが。
「とりあえず手分けして探そう」
「それでは、わたくしがホテル関係者に聞いてみます」
「私と春香ちゃんで館内と近場探してみる」
「それじゃ、俺と七海で祭りの会場まで行ってくる。もしかするとスリープから覚めて、俺達を追ったのかも知れないからな」
熊のぬいぐるみが勝手に歩いてたら、騒ぎどころじゃ済まないだろうが‥。
ホテルを出て、七海と海岸通りを歩く。
遅い時間だが、浴衣を着た観光客をまだ、ちらほら見かける。
「七海、ミツキの居場所って分かるか?」
「力を貰えれば‥」
「探してみて駄目だったら‥頼む」
「良いけど‥」
七海は珍しく悩む様子だった。
「どした?」
「女難の相」
「構い過ぎって事?」
「家族じゃない、でしょ」
「分かってはいるけど‥」
七海は俺が手当たり次第に助けようとしているのでは無いか、と指摘しているのだろう。
言いたいことはわかる。
が、ミツキとはもう数ヶ月一緒に過ごしている。
今更、他人とは思えない。
「コレでも心配してる」
七海は俺の顔を見つめて言った。
「俺を?」
「そう。律斗に‥変って欲しくない」
「変わる?」
「そう」
それっきり七海は何も言わなかった。
何がどう変わるのか‥それは分からない。
七海があえて言わないと言う事は、その方が良いと考えているのかも知れない。
でも、七海が心配してくれるのは、素直に嬉しかった。
「ありがとな」
七海の頭に手を伸ばし、柔らかな髪を指で撫でた。
「ん」
七海は少しだけ俺の方に身体を寄せた。
祭りをやっていた広場まで戻って来た。
既に明かりも消えて、薄暗い。
観光客も引き揚げてしまっている。
と、
「お、オバケーーー!」
舞台の方から叫び声が聞こえた。
声の様子からすると、まだ子供の様だ。
慌てて、声の方に向かってみる。
「どうした?」
見ると、数人の子供が舞台の袖に座り込んでいる。
「だ、大丈夫か?」
声をかけると、子供達は皆、上の方を見て震えている。
「上?」
子供達が指差す方を見る。
明かりの落ちた舞台。
天井近くに広場中央まで電線が渡っている。
その上を奇妙な動きで動く影があった。
猫かとも思ったが、それにしては大きい。
2足を器用に使って、ふらふらしながらも電線の上をいったり来たりしている。
「おいおい、マジか‥」
思わず声が漏れた。
電線の上に居るのはミツキ熊だった。
まるで酔っぱらった様にふらふらしながら、電線の上で踊っている。
俺は慌てて子供達の視線を遮る様に移動した。
「あー、君達。あれは熊‥そう、アライグマだね」
「え?」
きょとん、とする子供達。
「アライグマも暴れると危険なんだ。すぐ逃げなさい」
「え、それにしては太くない、ですか?」
子供の1人が尋ねる。
この辺りの子供ならアライグマを見たこともあるかも知れない。
「あれは、動物園で飼われていたのが逃げ出したんだ。だから太っているんだよ」
「ふうーん」
「七海、頼む」
「分かった。こっち‥」
七海は子供達を促す。
子供達は素直に従って広場を出て行った。
こういう時に七海の意識誘導は助かる。
その間に俺は電線に近づく。
「ミツキ、なにやってる! 降りろよ」
熊に声をかける。
「あー、トントン、ひゃひゃら〜」
熊は謎の歌を口ずさんでいた。
「なんだ‥酔っぱらっているのか?」
そこに、子供達を送った七海が戻って来た。
「違う。‥手を貸して」
言われ、七海の手を取る。
すると掌にピリピリとした刺激が伝わると共に、視界の隅から何か黒い影の様な物が見え始めた。
「あれ、何か‥見える‥」
段々と見え始めたのは‥。
「小人?」
それは黒くて小さな人型をしていた。
ミツキと一緒に電線の上で何人もが奇妙な踊りを踊っている。
「見覚え、無い?」
七海に言われた時、雲が流れ、満月が顔を覗かせる。
辺りが先程よりずっと明るくなった。
「あ、あれ‥」
それは昼間、俺を取り囲んだあの子供達だった。
大きさは違うが、確かに‥。
皆で楽しそうに電線の上で踊っている。
「一欠片付いて来てたみたい」
七海が呆れた様に言う。
「う、うーん。どうする‥」
「朝になれば帰っていくと思う」
「それだと騒ぎになるよな‥」
「そうね」
「どうにか帰ってもらう方法は?」
「身代わりが居れば‥」
「ミツキの?」
コクリと頷く七海。
「それなら‥」
俺が代わる、と言おうとして七海に制止された。
「律斗は駄目。もう駄目!」
七海は少し涙を浮かべて強く俺の手を握った。
「でもそれじゃ‥あ」
俺はポケットからいくつか小さな人形を取り出した。
「コレでどうかな?」
取り出したのは、小さなヒヨコの人形だ。
明日、あの墓に持って行くお供え物として屋台で買っていた。
「説得して見る」
七海は俺から離れると、電線の真下に行き、人形をかざした。
小人達は動きを止め、様子を伺っているようだ‥。
暫くして‥。
『パチン!』
何かが爆ぜる様な音がして‥あの小人達は見えなくなった。
残されたのは俺と七海。
‥と電線の上の熊。
「あわわわ、私なんで、こんなとこーー?」
ミツキ熊が正気を取り戻し、途端に騒がしくなる。
「大丈夫か? 降りられる?」
俺は熊に声をかける。
「む、む、無理! 助けて〜」
「仕方ないな‥」
俺はミツキ熊の真下に行き、手を広げた。
「飛び降りろ、受け止めるから」
「ほ、ホントに? お兄ちゃんーー」
「大丈夫だから、早く」
「じゃ、じゃあ行くよ‥えーい」
『ゴチン』
「痛たーーっ」
よりによって、ミツキ熊は俺の頭上に飛び降りた。
そして熊はバッテリー内蔵で‥硬かった。
「ご、ごめん‥」
『ピヨピヨピヨピヨ』
七海の持ったヒヨコ人形が微かな鳴き声をあげた。
翌日、俺達はミツキ熊も含めて、夏休みを楽しんだ。
海岸でスイカ割りをしたり、お土産を買ったり。
七海のポシェットに付けた例のヒヨコ人形は、たまにピヨピヨと可愛い鳴き声を上げていた。
もちろん、屋台で売っている一つ100円もしないヒヨコの人形に、鳴く機能なんて付いている訳は無かった。
さてさて、律斗君達の夏休みまでのお話はここで一旦完結です。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
プロット的にはこの先のお話や、将来のお話も考えて有りますので⋯読みたいと言うご意見、ご感想が有れば、ぜひ書いてみたい所です。
この作品のキャラは皆元気で、ほっておいてもどんどんお話を描いてくれるので、作者自身もまるで映画館の最前列でドラマを鑑賞しているの様な気持ちで書いていて楽しかったです。
また次の作品や続きのお話でお会いできればうれしいですね。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
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気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ちょっと不思議なラブコメ「幼馴染がいろいろおかしい」
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