えくすとら2
外伝ストーリーその2です。
波音が遠くに聞こえた。
額にあてた保冷パッドが冷たく気持ち良い。
先程よりは大分回復したようだ。
「うう、酷い目にあった」
「のぼせたみたいですね。少し休んでいて下さい」
傍らに座った藤原さんが保冷パッドを交換してくれた。
「‥のぼせた‥」
「まだ病み上がりですから、無理は禁物ですよ」
「申し訳ない」
と言っても、あの状況で興奮しない青少年男子が居たら見てみたい。
「はい、アイス」
隣に座っていた七海が食べかけを差し出した。
「ありがと」
上半身を起こして受け取る。
アイスを齧ったら少し頭がはっきりした気がする。
七海はそのまま俺の太腿に上半身を預けて横になる。
流れたサラサラの銀髪がくすぐったい。
「ねむ」
そう言うと、そのまま眠り始めた。
うん、ほぼ猫だな。
しばらくすると美月と藍染と熊が帰ってきた。
「あ兄ぃ、大丈夫? 冷たい物買ってきたよ」
そう言ってスポーツドリンクを差し出す。
恐らく、隣の浜まで行ってきたのだろう。
「おお、助かる」
「はい、これも」
藍染が保冷パッドを束で渡す。
これを、一気に全部貼ったらミイラ男みたいになってしまう。
1つだけ貰って後はクーラーボックスに入れておく。
「そうそう、お祭りが有るんだって。後で皆で行ってみようよ」
藍染が貰ってきたチラシを見せた。
「そいや、最近は夏祭りなんて行ってなかったな」
「良いですね」
藤原さんも頷く。
「綿あめ食べたい」
七海が珍しく興味を示す。
「熊はどうする?」
「熊じゃないよ。ミツキだよぉ」
「クマ型ミツキ‥はどうする」
「行きたいけど留守番してる。バッテリーが切れそうだから」
「じゃあ、なにかお土産買ってくるな」
「うん、待ってる」
とりあえず5人で行くことに成りそうだ。
「ねね、ビーチバレーやらない?」
美月が持ってきたビーチボールを膨らませながら言った。
指差す先にビーチバレーコートが見えた。
「良いけどアタック禁止な」
「えー?!」
「お前、以前にそれでビーチボール破壊しただろ」
「‥はぁぃ」
とりあえず、病み上がりの俺が審判をすることにして、美月vs藤原さんが対戦することになった。
が、始めてみると一向に勝負が付かない。
アタック禁止のルールではスペックの高い2人はコート内なら全て拾えてしまう。
「これは‥チーム戦にする必要があるな‥」
「じゃあ、私と春香ちゃんでどう?」
美月が言った。
と言う事は藤原さんと七海がチームとなる。
「いいバランスかもな」
始めてみると、絶妙なバランスで好試合になった。
藍染はそこそこ運動できるとは思ったが、意外なのは七海だった。
上手く立ち回って藤原さんをフォローしている。
何度かのラリーの後、藤原さんの絶妙なボールがライン際に飛んだ。
俺は落下点を見極めようと、ラインに向った。
美月もレシーブしようと走りながらボールに手を伸ばした。
『ドサッ!』
「うわっ」
「キャッ」
美月と交錯し、押し倒される形で転倒した。
幸い、下は柔らかい砂浜だから怪我はない。
「ご、ごめん、あ兄ぃ。大丈夫?」
「ああ、美月は大丈夫か?」
「うん、平気‥」
すりすり。
手を伸ばし俺の肩を抱く。
返事はするが、一向に立ち上がらない。
「おい、大丈夫‥」
「大丈夫だけど、大丈夫じゃない」
「おま、わざと‥」
「ちょっと栄養補給‥」
『ピピピーーッ』
藤原さんのホイッスルが鳴った。
「美月さん、5秒ルール違反です」
‥水着だと5秒らしい。
「あう」
渋々立ち上がる美月。
「もう、美月ちゃんたら‥」
駆け寄った藍染は呆れて言う。
そして、俺の前に立つ。
「ん? どうした?」
「えーと‥‥えいっ」
「ぐわっ」
今度は藍染に押し倒された。
「ななな?」
「私も」
そう言って俺の肩を抱く。
「‥ビーチバレーって審判を押し倒す競技だっけ?」
「多分そうだよ‥」
『ピピピーーッ』
再び藤原さんのホイッスルが鳴った。
「お嬢様もルール違反‥この試合は没収試合です」
‥試合が終わってしまった。
「没収試合は厳しくない?」
美月は頬を膨らませた。
「藤原ってば、自分がりっくんに抱きつけないからだよ」
「ち、違います。公平なルールです」
「ホントに?」
「もちろんです」
「りっくんの前でもそれ、言える?」
「当然です」
藤原さんは俺の正面に立った。
「律斗さん、えと‥ルールが‥ですね」
何故かしどろもどろの藤原さん。
「「えいっ」」
「キャッ」
美月と藍染、2人に後から押されて、藤原さんは俺に向かって倒れ込んだ。
「え、また?!」
俺は思わず藤原さんを抱きとめる形で転倒した。
抱きしめた藤原さんの身体は柔らかく、たおやかだ。
藤原さんの事だから、直ぐに起き上がって、二人に文句を言うのかと思ったが‥。
「はん‥ぁ」
一瞬、やけに色っぽい吐息が藤原さんの口から漏れた。
慌てて立ち上がろうとする藤原さん。
「ちちち違います、こ、これはっ!」
真っ赤になって否定する藤原さん。
「みずくさいのは駄目だよ、ねえ」
美月が指で藤原さんをチョンチョンとつつきながら言った。
「ひゃん!」
「そうだよ、お姉ちゃん」
反対側から藍染もつつく。
「あひゃ」
藤原さんは思わず身を震わせると、こちらを見た。
「た、助けて下さい、律斗さん‥」
普段、颯爽としている藤原さんでは滅多に見れない困り顔だった。
「ごめん、可愛いから、もう少し見てて良い?」
「り、律斗さーーん」
藤原さんの声がビーチに響いた。
外伝はまた何話か纏ったら投稿します。
ので、一旦完結にしときます。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
ぜひぜひ御意見、お聞かせ下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
もちろん評価とか貰えたら大感謝‥いや、望みすぎは良くないですね、反省。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
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