VRバトルもいろいろおかしい
自宅での事件から暫くして。
美月のアバター、ミツキがデビューを飾るVRライブイベントが開催される。
そこに主人公も参加して‥
VRグラスを有効にすると、視界がキラキラとしたノイズに埋め尽くされ、体がふわりと浮き上がる様な感覚が走った。
その後、ゆっくりと視界が晴れてゆき、岩壁に囲まれた地下空間が現れる。
俺はその空間の中央付近に立っていた。
隣にはミツキがいる。
ミツキはバトルステージが初見なのか、キョロキョロと見回すと、
「おおっ、これは凄い‥リアルだぁ」
と感想を漏らした。
ん?
VRのアバターがリアル?
何か微妙に違和感を感じるが‥。
「はっ、思わず見とれちゃった」
ミツキはマイクを握り直した。
「これから、皆様ご注目の最新VRシステムによる“ファンタズム・ワールドVR”バトルをご覧下さい」
言いながら俺の隣に並び、司会を続ける。
「演武を担当するのは皆様ご存知、“ソードオブワン”、リツト!」
限りなくリアルになった俺のアバターをカメラが捉えた。
緻密に表現された鎧は一歩踏み出す度に金具が鳴り、砂埃が舞った。
足元の小石でさえ一つとして同じ形のものは無い。
岩盤に反響する音も再現されている。
現実としか思えない緻密さ。
これが最先端Aiが“ファンタズム・ワールド”のモデルから学習生成したVRキャラクターモデルだ。
もちろんVAの様に自立行動をする訳ではなく、ゲームの動きを再現する物に過ぎない。
だが、視聴者の反応は凄かった。
“おお、あれがソードオブワンかぁ”
“すげぇ、本当にこのクオリティでゲームできるのか?”
“リアル過ぎて落ち着かないんだが‥”
“早くVRグラス欲しい!!”
画面隅のコメントが驚くほどの速さで流れている。
これが梅澤さんのもう一つの仕掛け。
最先端Aiとオンラインゲームをリンクさせ、そのままVR化するシステムだ。
世界中の“ファンタズム・ワールド”のプレイヤーが、誰でもVRグラスを手に入れるだけでこのクオリティでゲームをプレイできる。
一方のAi側は何千万人ものユーザーを確保した事になる。
そうして最先端Aiの学習と利用率を一気に進めようと言うのが狙いだ。
その中で俺に今回のデモプレイヤーの声が掛かった。
もちろんヤラセは無しの一発勝負。
ゲーマーとしての腕が試される戦いでもある。
「自信のほどは?」
ミツキが俺にマイクを向ける。
「もちろん、有ります!」
俺は腕を振り上げた。
「期待してます、頑張って!」
ミツキはそう言って俺の肩をポン、と叩き退場した。
代わりにステージ中央に暗黒の鎧を纏ったボスが登場する。
あの、サイクロプスの最終形態で苦戦したヤツだった。
しかし、こちらもあの時のままでは無い。
「まぁ、やってやるさ」
俺は“夜魔の大剣”を抜き、身構えた。
『バトル スタート!』
画面のテロップ表示が消えると共に黒騎士は高速の踏み込みで斬り掛かってきた。
ギュオッ!
目にも止まらない速さ。
あの時は藍染の束縛魔法を使ってさえ、その速度を抑えるのが精一杯だった。
「2度も食らうかっ」
ガッシャン
俺は盾ではなく剣でその切り込みを受けた。
火花が散り、持つ手が衝撃で痺れる。
黒騎士の鎧の中の血走った目さえもリアルだった。
“なん?”
“早っ”
コメントが流れるより、黒騎士の斬撃は早かった。
『黒騎士、初手でいきなりスキル発動っ!』
ミツキの解説が入る。
そこから押し返し、今度は俺が上下への二段斬り。
もちろん、本来こんな動作は無い。
“なんだ、いまの?”
“あんな事できるのか!”
“解説ヨロ”
視界の隅でコメントが流れるのが見えた。
『わわっ、モーションをキャンセルしたっ?』
かすかさずミツキの解説。
ああ、これでキャンセル技が広まってしまう‥。
二段目の下段斬りが僅かに黒騎士の足にヒット。
夜魔の大剣の漆黒のオーラが黒騎士を捉え、一気に黒騎士のヒットポイントが減る。
ダメージを受けた黒騎士は一瞬屈んだかと思うと、いきなりショルダータックルをしてきた。
『黒騎士、今度は新技かっ? !』
俺は対応が間に合わず吹き飛ばされ、岩壁に激突、転倒した。
こちらも一気にヒットポイントが減る。
『リツト、危ないっ!』
間髪入れずに切り込む黒騎士。
振り下ろされた剣を必死に横にかわす。
ガギィン! ガチン!
そのまま1合2合と打ち合う。
互いの剣の威力は同等だ。
再び間合いを取って睨み合った。
黒騎士は今までと攻撃パターンを変えてきた。
このままではこちらが不利だ。
一か八か‥。
俺は素早くコントローラーをブラインドで操作し、夜魔の大剣の固有スキルを有効にする。
すると、剣から湧き上がった漆黒のオーラが俺自身を包んだ。
画面にテロップで詠唱呪文が表示される。
“夜魔よ夜魔よ闇の王、同胞の捧げし供物もってその力与えん”
同時に俺のヒットポイントメーターがみるみる下がってゆく。
『リツト、呪文詠唱‥え、これ、非公開スキル。どんな効果が‥』
“なにが起こった?”
“自爆?”
“ヤバいでしょ、アレじゃ”
“すぐ終わる”
「ハァッ!」
流れるコメントを無視して俺は黒騎士に向かってダッシュしながらの神速の上段斬り。
黒騎士は辛うじて盾でこれを受ける。
が、これは計算済み。
そのまま休む事なくモーションキャンセルを併用した高速の連撃を打ち込み続ける。
『リツト、物凄い打ち込みです! 決められるか?』
この大幅な動作速度上昇が、夜魔の大剣の非公式固有スキル“夜魔との盟約”だ。
俺は先日この裏技を発見し、使いこなす鍛錬をしてきた。
黒騎士も剣で受けながら反撃を試みるが、こちらの攻撃速度が遥かに速い。
隙をついてどんどんダメージを与えてゆく。
切れ目なく打ち込み、高速移動を出す隙すら与えない。
ガキィン!ガギン!ガチン!
撃ち込む斬撃が岩壁に反響する。
“こっちも速くなった”
“どゆこと?”
“既に人外の戦い”
こうなれば手数勝負。
黒騎士の体力を削り切るのが早いか、こちらの体力消耗が早いかだ。
「くそ、痛つっっ」
ただ、普段なら何気ない操作が、治療中の身には辛い。
キャンセル技は一瞬のタイミング勝負だ。
一度でも外せば逆に隙が出来てしまう。
脂汗が頬に流れる。
俺は必死にコントローラーを操作した。
黒騎士もこちらの狙いを察したのか、ダメージを受けるのを承知での中段薙ぎ払いを出す。
「しゃあっ!」
これを狙っていた。
俺は気合い一閃、その剣目掛けて夜魔の大剣を振り下ろした。
カッキーーン!
弾けあう剣と剣。
空気が振動し、閃光が弾ける。
『リツト、リフレクション・カウンターッ!』
“うおっ!”
“リフレクション?”
“これを狙ってたのか !”
カウンターのエフェクトを纏った俺は、弾けた剣の軌道を体を捻る事でそのまま回転へと変え、黒騎士に叩き込んだ。
大剣に肩から袈裟斬りにされる黒騎士。
「グアァーー」
黒騎士は断末魔を上げながら光の粒子と成って消えた。
あの時は4人掛かりだった敵を、今回は一人で倒した‥。
感慨もひとしおだった。
『ウイナー リツト!』
画面に勝利のテロップが表示される。
やれやれ、何とか自分の仕事はやり遂げた。
背景がステージに戻り、ミツキが現れた。
周囲の観客も一斉に歓声をあげる。
俺は大剣を掲げ、それに応えた。
「リツト、お見事でした!」
ミツキはそう言って俺の頬にチークキス。
「え?」
思わず声が漏れる。
これは予定に無かった‥美月のアドリブ?
“うらやましい”
“え、今?!”
“おいおい”
“いきなりスキャンダルか?”
画面のコメントが先を上回る速度で流れる。
その中でミツキは手を挙げ、再度解説を始める。
「ここでプレイヤーの皆さんに一つ、サプライズが有りまーす!」
ミツキは声高らかに宣言した。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
ぜひぜひ御意見、お聞かせ下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
もちろん評価とか貰えたら大感謝‥いや、望みすぎは良くないですね、反省。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ちょっと不思議なラブコメ「幼馴染がいろいろおかしい」
https://ncode.syosetu.com/n2628lw/
ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」
https://ncode.syosetu.com/n3869lm/
ファンタジーラブコメ「ウチの弟が弟じゃない」
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SF未来アイドル「えれくとろんあーく」
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ファンタジーバトル「冥界送人」
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