ライブステージもいろいろおかしい
いよいよクライマックスへと続きます。
ここからは一気に書くので掲載が不規則になるかもです。
ブックマークでお見逃しなく。
巨大なドーム会場。
瞬くレーザーのイルミネーション。
身を震わすほどのライブミュージック。
会場中央にはイルミネーションに彩られた大型のステージ。
数多の観客が今から始まるライブを固唾を飲んで見守っていた。
それもそのはず。
結婚式場のプロモーションで話題になった“あの”少女のファーストステージなのだ。
実は公式には彼女がプロモーションの少女とは言われていない。
だが、広告に流れてきた予告を見れば、誰の目にも明らかだった。
と、ステージ中央にスポットライトが集まり、一人の少女の姿を浮かび上がらせた。
少女は軽く手を振ると、観客席を見渡す。
「皆さん、はじめましてっ! ミツキ、でーすっ!」
煌びやかな衣装を身にまとった少女は元気にターンを披露しコールする。
「「「ウワァーーー!」」」
「ミツキちゃーーん!」
「ミツキィーー!」
観客席からの熱烈なレスポンスが幾重にもこだまし、更に会場の熱狂が上がってゆく。
「このステージを見に来てくれてありがとう! 早速だけど一曲目、行きます!」
ミツキは一瞬、目を閉じ呼吸を整えた。
「聞いてください、“マイ・ウェディング”!」
『♫〜』
「「「ウワァーーーー」」」
イントロが流れると同時に更に高まる歓声が会場を震わせた。
「凄いな、これ‥」
俺は病室のベッドでVRグラス越しの光景に見入っていた。
「全く現実で見ているのと遜色ない」
実はこのライブステージは現実の光景では無い。
新しく開発されたAi-VRシステムによる仮想空間の光景だった 。
ステージ上で歌っているのも美月本人ではなく、Aiが美月を学習して生み出した分身、“ミツキ”だ。
良く見れば色々と美月とは違っている。
瞳はブルーとルビーのオッドアイだし、髪色も金髪に近い明るいオレンジ。
身長も美月より少し高い。
しかも周囲には常に小さなパーティクルが煌めきながら飛び回っている。
とは言え、仮に美月がメイクしてハイヒールを履けば、ほぼ同じ容姿になるだろう。
それほど、ミツキは美月にそっくりだった。
『ミツキは単に表面的な映像だけを真似たCGキャラクターでは有りません。表皮の色素構成から運動による鼓動、体温上昇や発汗、血流の増加まで本当に全てをリアルタイムで再現してます』
VRグラスのヘッドフォンから、梅澤さんの声が興奮気味に答える。
「それって物凄い事なんじゃ‥」
そこまでを再現するのにはどれほどの演算性能が必要なのだろう。
想像もつかない。
『はい、このAiシステムでなければ実現しませんでした。それに観客も仮想ではなくて、実際のお客様のアバター。本当にあれだけの人がステージを応援しているんです』
「狙いは大当たりですね」
『何を言っているんです、これからが本番じゃないですか』
「まぁ、妹の晴れ舞台ですから‥できるだけの事はしますよ」
『お怪我しているのに、申し訳ないです』
「だいぶ回復したので大丈夫ですよ」
「どうしても辛くなったら言ってね、りっく‥あなた」
「いや、それはさすがに照れるから、勘弁して」
言いながら俺はVRグラスの機能を一旦OFFにして、隣にいる藍染を見る。
藍染は微笑んで俺の手に手を重ねた。
ここは俺が担ぎ込まれた病院。
の、個室病室。
偶然と言うか必然と言うか、藍染が治療を受けている病院でもある。
あの日、俺は暴漢に刺傷されて一時はかなり危なかった‥らしい。
今でも手足と腹には包帯が巻かれていて痛む。
幸い、直後に梅澤さんが暴漢を取り押さえたので美月達に怪我はなく、犯人を現行犯で逮捕できたのは幸いだ。
意識が回復した時には、美月は縋り付いて号泣するし、藍染は何やら儀式めいた事をしているし、セブンは俺の腕に齧り付くしで、大変だった。
まぁ何とか回復して、今ではこうしてベッドに身を起こせるまでにはなった。
俺はふと気になってセブンに尋ねた。
「そう言えば、なぜこの事は予知できなかったんだ?」
「予知できてた」
セブンは平然と答える。
「え、それなら何故教えて‥あ、まさか」
「そう。あの時に律斗が刺され、ヤツが捕まる事が‥最後の条件。お役目ご苦労」
「それ、他に方法は‥」
知らなかったとは言え、それはかなりのカケなのでは。
「無い。あの時あの瞬間に捕らえなければ、あの男がデビューした美月を刺殺するのを防げない」
「そ、そうなんだ‥」
こればかりはセブンを信じる以外ない。
俺達は起こらなかった未来を知ることはできない。
ベッドの傍らには、藤原さんも居るが、美月は何かあった時のスタンバイとしてスタジオに入っていて、ここには居なかった。
向かいの壁には巨大なモニターが設置され、先程のVRと同じ光景が映し出されている。
「Aiによる仮想空間構築と自己学習型アバター、でしたか? 恐るべきシステムですね‥現実と全く区別がつきません」
藤原さんも感嘆の声を上げる。
「それも藍染が開発協力してるって」
「トリニティ‥とか‥私はその方面疎くて‥」
藤原さんは恐縮していたが、無理もない。
世界でそのシステムを理解しているのは開発者ただ一人と言われるほどの高度なシステムだそうだ。
あの日、梅澤さんが見せた名刺に書かれていたのがこれだった。
正式には“最先端Ai試験開発およびテストプロダクション”‥だったか。
藍染も参画している超国家レベルの巨大プロジェクト、最先端Ai開発の応用の一つとして、仮想空間作成と運用のテスト、そしてプロモーションを手掛ける会社らしい。
あの時の梅澤さんはこう言っていた。
「美月さんにぜひ今回のプロジェクトのメインキャラクターのモデルをお願いしたいのです」
「モデル‥それはいわゆるバーチャルアイドル活動と言うやつですか?」
俺はそう尋ねた。
今ひとつモデル、と言う言い方が釈然としなかった。
「いえ、活動は美月さんの動作を学習した、Aiモデル自体が自律的に行います。もちろん適宜の再調整や、中の人としてのインタビュー等はあるでしょうが‥プライベートに支障を来す様な事をお願いするつもりは有りません」
「うーん、アニメの声優みたいなものでしょうか?」
俺が想像したのはこれだった。
「近いとは思います。しかしVAの場合、他の人の学習データーも使いますので‥」
と、何か謎のワードが出てきた。
「えと、VAというのは‥?」
「ああ、すみません。開発チーム内ではAiアバターの事を“VA”と呼んでいるのです」
「“VA”‥何かの略称ですか?」
「バーチャルアーティストの略称です。歌唱だけでなく作曲や演技等も視野に入れていますので‥」
「何となく分かってきました。他の人のデーターも学習すると言う事は、つまりアバター‥“VA”を皆で育てるプロジェクト、なのですね?」
俺は梅澤さんが難しいAiモデルの概念を把握していることに驚いていた。
そしてアイドル、と言わないのは梅澤さんの自戒とこだわりなんだろう。
「まさにその通りです。ただやはり基本モデルの影響は大きい。私は美月さんにして頂くのが最適だと考えています」
「でも、個人の能力を越えて学習するAiというのは、危険では無いですか?」
それって下手をすると超人を生み出す事になりかねないのでは‥。
「もちろんセーフティや対策も有ります。管理者はAiに直接的に指示できる権限なども有ります‥ただ、それは今回不要ではないかと考えています」
「それは何故ですか??」
「理論提唱者で開発責任者でもある博士はこう言っていたのです。“VAは映し鏡に過ぎない。モデルの人が愛を知るなら、VAも知っているだろう”‥と」
「え、仮想のキャラクターが、ですか?」
「はい‥それがあくまで抽象的な意味なのか、Aiが学習でそこまでの事を理解するのか‥その辺りは私にも理解が及びません‥」
世界で指折りの超天才の考えることだ。
そうなのかと頷く事しかできない。
梅澤さんは一つ咳払いをすると、言った。
『さあ、これからが本番です、律斗さん』
「分かりました‥行きます」
俺はVRグラスの機能を再び有効にし、傍らのコントローラーを手に取った。
今度は俺が魅せる番だった。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
ぜひぜひ御意見、お聞かせ下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
もちろん評価とか貰えたら大感謝‥いや、望みすぎは良くないですね、反省。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ちょっと不思議なラブコメ「幼馴染がいろいろおかしい」
https://ncode.syosetu.com/n2628lw/
ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」
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