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5.国王様は認めない

 僕らを乗せた馬車は、まっすぐ王城へと向かっていた。

 途中の小さな門を潜ってから、街の景色が変化した。

 

「ここは貴族街よ。王国に属する貴族の方々が暮らしているの」

「そ、そうなんだ」


 道理で大きな建物ばかりだと思った。

 見かける人の服装も、さっきまでたくさんいた人たちと全然違う。

 お金持ちって感じの服を着ている。

 僕は自分の服装を見て、少しだけ不安になっていた。


「僕……こんな服だけど大丈夫かな」

「気にしなくて良いわ」

「でも、普通の服だよ?」

「別にいいのよ。何を着ててもフランは格好良いから」

「かっ、ありがとう」


 そんなこんなで、いつの間にか王城の敷地内に入っていた。

 馬車が停まり、扉が開かれる。


「レミリア様、お帰りなさいませ」

「ありがとう。さぁフラン、貴方も降りて」

「う、うん」


 出迎えてくれたのは黒い服をした大人たち。

 腰に剣を装備した人もいる。

 あれはこのお城の騎士様かな。

 他にもメイド服を着ている人たちがいるぞ。

 彼らを見ていると、余計に自分が場違いすぎて心が揺らぐ。

 それを感じ取ってくれたのか、彼女はそっと手を差し伸べる。


「行きましょう」

「うん」


 彼女の手を握ると、不思議と落ち着くことができた。

 そのまま二人で王城の中に入る。

 当たり前だけど、王城の中も初めてだ。

 一言で表すと、何もかもが大きい。

 廊下が僕の家より広くて、天井だって何倍も高い。

 まるで、自分が小さくなったような違和感すら感じてしまうほどだ。


「ねぇレミリアちゃん」

「何?」

「どこに向かってるの?」

「お父様の所よ。フランを紹介しょうと思うの」

「えっ……」


 レミリアのお父さんって……この国の王様だよね?

 だ、大丈夫なのかな。


 不安を感じた時には、目の前に飛び切り豪華な扉があった。

 すぐに察した。

 この扉の先に、国王様がいる。


 レミリアは躊躇なく扉を開ける。

 心の準備なんてしている暇はない。

 開けてすぐ、奥の玉座で国王様が待っていた。


「お父様、ただいま戻りましたわ」

「おぉ、レミリアか。定刻通り戻ってくとは、さすが我が娘だ」


 国王アーグラム・フローレント。

 いかつい髭を生やし、王冠が似合う。

 そして、隣に座っているのが、彼女のお母さん。

 王妃ミローラ・フローレント。


「お帰りなさい、レミリア」

「はい、お母様」


 レミリアと同じ髪色で、瞳の色がオレンジ色と異なっている。

 それ以外は本当にそっくりで、親子らしさが感じられる。


「して、紹介したい者がいると聞いたが……」


 国王様の視線が僕に向けられる。

 ギロっと怖い目つきで睨まれて、思わずたじろいでしまった。


「はい、彼がフランですわ。さっ、あいさつして」

「フランです! よ、よろしくお願いします。」

「……はぁ~」


 勇気を振り絞ったあいさつに、国王様は盛大なため息をもらす。

 そのまま肘をつき、ムックリと不機嫌な表情で言う。


「まさか、その平民がそうであるのか?」

「はい」

「レミリアよ。冗談は――」

「冗談ではありませんわ」


 国王様が言い切る前に、レミリアが否定した。

 これに国王様はぴくっと反応して、眉をひそめる。

 そして――


「お父様、お母様。私はフランと結婚します」


 レミリアはハッキリと宣言した。

 まっすぐに前を見つめ、揺るぎない目で語る。

 それを見て、僕は自分が情けなくなった。


 僕もちゃんと言わなきゃ!

 そう思って、口を開こうとしたとき、国王様が怒鳴るように言う。


「ならんぞ!」

 

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