4.王都へ
ラグラード王国。
それが、僕たちが暮らしている国の名前だ。
総人口は数ある国の中で第三位。
魔法技術の進歩によって発展し、ここ数百年で三大大国と呼ばれるようになった。
再会を果たした僕は、レミリアの馬車に荷物を運ぶ。
村を出ていくことになるけど、心残りは一切ない。
育ててくれたおじいちゃんはもういないし、村の皆も僕がいないほうが良いだろう。
お世話になった家に一礼して、彼女の待つ馬車へ乗り込む。
「忘れ物はないかしら?」
「うん、大丈夫」
「そう。じゃあ出発ね」
彼女の一言で、馬車が動き出す。
目指すはラグラード王国の主要都市『王都ユリノア』。
馬車でも三日はかかる道のりだ。
「ちょうど良いわね。たくさんお話ししましょう?」
「うん。僕もレミリアちゃんと話したい」
「ふふふっ、相変わらず素直ね。そういう所が気に入ったのだけど」
それから僕たちは、色々なことを話した。
会えなかった八年分を埋めるように、互いの成長と道程を確認しあう。
日が落ちてもお構いなく、賑やかな時間が過ぎていく。
こんなにも幸せな時間は、あの日以来だと思う。
たった数日一緒にいるだけで、今日までの苦労が洗い流されていくようだ。
そして――
あっという間に三日が過ぎる。
王都ユリノア。
城を中心に広がるこの国で最も大きな街。
王族に連なる貴族たちも多く暮らしており、様々な文化や産業が混ざり合っている。
入り口は東西に一か所ずつ。
巨大な門を通れば、奇麗な街並みが広がっていた。
「ここが王都!」
「フランは初めてなの?」
「うん! 話で聞いたことはあったけど、来るのも見るのも初めてだ」
何もかもが大きい。
小さな村しか知らない僕にとって、そこは別世界のようだった。
夢中になって眺める僕に、レミリアがクスリと笑う。
「どうしたの? 僕何か変なこと言った?」
「ううん。あんまり楽しそうだったから、うれしくなっただけよ」
「楽しいよ。僕も今日から、ここで暮らすんだね」
「何言ってるの? ここじゃないわよ」
「えっ……」
盛り上がっていた僕は、勝手にガッカリしてしょぼくれる。
そんな僕を見て、ニコッと微笑み彼女が言う。
「ここは一般の人たちが暮らしてる場所なの。フランは私とあっちよ」
「あっち?」
彼女が指をさしている。
馬車が走っている方向と一緒だ。
僕は馬車の窓からのぞき込む。
視界に飛び込んできたのは、この国のお城だった。
「あのお城?」
「そうよ。これでも私はお姫様だもの」
これでも、なんて似合わない。
誰がどう見たって、彼女はお姫様だ。
そして僕も、改めて身分の差を思い出していた。




