17.師弟対決
トーナメントが終了後、大会も一区切り。
三十分の休憩を挟んでから、最後の一戦が開始される。
対戦カードは―
騎士団長アドロフ・サーベルト vs 挑戦者フラン
この戦いに勝利した者に、王国最強の称号が与えられる。
誰もが注目する一戦が迫る中、俺はレミリアのいる観戦席まで訪れていた。
「お疲れ様ね、フラン」
「ありがと。ちゃんと見ていてくれた?」
「もちろんよ。とっても格好良かったわ」
「そっか、なら良かったよ」
良い雰囲気で話す俺たちを見て、国王様がわざとらしく咳ばらいをする。
俺たちはそろって振り向く。
すると、イチャつくなと言わんばかりに不満げな顔を見せていた。
「陛下も見ていただけましたか?」
「ふんっ、知らぬな」
「嘘よ? ちゃんと見ていたから安心してね」
「こ、こらやめんか!」
ワーワー言い合う国王様と王妃様。
この光景も最近は見慣れてきた。
不遜にも微笑ましくて、ポカポカした気分になる。
それから俺は、二人の隣に立つアドルフさんに目を向ける。
「遂にここまで来たな」
「はい。お待たせしました」
「ああ、ようやく全力の君と戦える」
全力の、という言葉が引っかかる。
俺は腕輪をチラッと見てから、訴えかけるようにレミリアへ視線を送る。
「いいわよ」
「本当?」
「ええ」
「ありがとう」
「その代わり、絶対に勝ちなさい」
「うん、俺は負けないよ」
そう言って、俺はアドルフさんに視線を戻す。
「私も負けるつもりは毛頭ないぞ」
「知ってます」
互いに目を合わせ、不敵に笑い合う。
自信や期待という感情を抱きながら、己の勝利を心に誓う。
そして――
時間がたち、俺たちはコロシアムの中央で向かい合う。
開始の合図が鳴るまで、残り二十秒。
カウントダウンが、観客の声で始まる。
「一応言っておくが、手加減は不要だぞ」
「大丈夫です。するつもりは初めからありませんから」
そう言って、俺は腕輪を外す。
身体の重さを三倍にする腕輪だ。
文字通りの枷を外して、身体が軽くなったのを実感する。
残り十秒。
互いに鞘をおさえ、ゆっくりと剣を抜く。
まったく同じ所作で、構えも似ている。
もしかすると、会場の皆も気づくかもしれない。
アドルフさんは、俺に剣術を教えてくれた師匠だ。
俺の強さの一旦は、この人がいたから得られた物だと言える。
カウント三、二、一……
――零!
鳴り響いたのは剣撃の音。
開始の合図が鳴った直後、瞬きの間に互いの剣がぶつかり合う。
距離が近づき、互いの顔がよく見える。
アドルフさんは笑っていた。
俺も笑っている。
待ち望んだ瞬間。
師弟対決が幕を開ける。




