15.ハンデ付き
武術大会には、世界中から参加者が集まる。
ただし、誰でも参加できるというわけではない。
過去の実績や推薦など、実力を証明するものが必ず必要になる。
要するに、この大会に参加する者に、弱者は一人もいないということだ。
それでも――
強者といえど、同列とは限らない。
圧倒的な差がある場合も、時としては起こりうる。
ちょうど今がそうであるように。
「嘘だろ……」
「ありえない……こんなことってあるのか」
観客席からポリツポリツと聞こえてくる声。
歓声ではなく、罵声ですらない。
その光景を目の当たりにして、彼らが最初に感じたのは困惑だった。
開始の合図がなったのは、今からたった二十分前。
そのときコロシアムの中央には、百を超える参加者が立っていた。
しかし、今立っているのは四人だけ。
予選第一ブロックは、過去最高のスピードで決着したのだ。
「ふぅ……案外疲れるんだな」
一人が汗をぬぐっている。
観客の視線が、その一人に集まっている。
いや、観客だけではない。
同じく最後に残った三人も、観客と同じように見つめていた。
王族専用の観客席。
レミリアとアドルフが、会場を見つめて自慢げに笑う。
「ふふっ、当然の結果ね」
「さすがだな」
一緒に観戦していた国王様と王妃様も、その光景に各々の反応を見せる。
「凄かったですね~」
「ふんっ、私は何も見ていない」
「あらあら」
俺は剣を鞘に納める。
周囲の視線に気づいたのは、実を言うとそのタイミングだった。
逆に驚いた俺だったけど、それもすぐに忘れる。
次の瞬間には、観客席から爆音のような歓声が聞こえてきたから。
先に言っておくが、俺は普通に戦っただけだ。
最初の一人を倒してから、なぜだか次々に俺に襲い掛かってきたからな。
全部を返り討ちにしていたら、気づけば四人に残っていた。
だから、この時の俺は知らない。
この場に集まった武術家のうち、半数を倒したのが自分だということを。
ハンデと思って腕輪を残したけど、結局あまり意味はなかったらしい。
その程度のハンデでは埋まらない実力差が、俺たちの間にはあったのだから。
「うわっ、何々?」
歓声が自分に向けられていることも、まだ気づいていなかった。
湧き上がる会場から、俺は逃げるように出ていく。
その後、三ブロックの予選が行われた。
三戦とも時間は四十分程度で終わり、勝ち残ったされた十六人が出そろった。
ここから決勝トーナメントに移る。
俺は誰と戦うことになるのか、トーナメント表を見ながらワクワクしていた。
その一方で、どうか初戦で俺と当たらないでくれ、という祈りが聞こえたような気がした。




