13.武術大会開幕
「あっ、そういえば伝えるのを忘れていたわ」
「えぇ……」
午後になり、魔法の勉強をしている最中。
様子を見に来たレミリアに、武術大会のことを聞いてみた。
その反応がこれだ。
黙っていたのは何か理由があるのだと思っていたのに、素で忘れていただけらしい。
「ごめんなさいね。最近はちょっと立て込んでたから」
「別にいいよ。そういえば、近頃貴族との会合が多いよね」
「ええ。この時期は毎年よ」
「そうなんだ。で、大会に参加する理由は?」
国中か注目する大会だ。
さすがにちゃんとした理由はあるのだろうと思う。
俺が尋ねると、彼女は改まったように口を開く。
「フラン、お父様が貴方に言ったことは覚えているわよね?」
「ああ、もちろん」
レミリアは頷き、話を続ける。
「あの日、お父様は貴方を認めなかった。理由は単純……貴方には私と釣り合うだけの箔が足りなかったからよ」
そうだな。
ただの村人でしかない俺が、王女のレミリアと同等に扱われるはずはない。
そして、今でもそこは変わっていない。
「この二年で貴方は見違えるほど成長したわ。でも、肝心の箔は二年前と変わっていない。だから、これから取りに行くのよ」
「取りに行く?」
「フラン。大会で優勝しなさい」
レミリアはハッキリとそう宣言した。
飾る言葉もなく、家臣に命令するように。
「王国最強の称号を持つ男……そんな相手なら、王女の私とも釣り合いそうだと思わない?」
「ああ、思うよ」
「ふふっ、そうよね。フラン! 優勝して、貴方の存在を国中に示してきて」
「了解」
そして、十日が過ぎる。
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王国主催の武術大会。
その開催日がやってきた。
会場となるのは、貴族街の中心部に建てられたコロシアム。
普段はなかなか入れない貴族街にも、今日だけは平民がたくさん出入りしている。
開始二時間前から、コロシアム周辺は大賑わいだ。
「相変わらず凄い人の数だね」
「そうね。去年より多いかしら?」
「そんな気がするよ。きっと皆、アドルフさんの戦いが目当てだろうね」
「ええ。去年の優勝は記憶に残っているもの」
「うん。俺もよく覚えてる」
王族の観覧席から、コロシアムに入場する人が見える。
俺たちは人混みを観察しながら、話を続ける。
「でも、今年はもっと記憶に残るはずよ。何せ貴方が優勝するんだから」
「いやいや、まだ優勝できるって決まったわけじゃないって」
「いいえ、決まっているわ。それとも自信がないの?」
「自信はあるよ。そのための二年だったんだから」
「そう。なら良いわ」
二人で顔を合わせて微笑む。
そのまま後ろへ振り向き、俺は彼に言う。
「というわけなので、負けませんよ? アドルフさん」
「ああ。望むところだ」




