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13.武術大会開幕

「あっ、そういえば伝えるのを忘れていたわ」

「えぇ……」


 午後になり、魔法の勉強をしている最中。

 様子を見に来たレミリアに、武術大会のことを聞いてみた。

 その反応がこれだ。

 黙っていたのは何か理由があるのだと思っていたのに、素で忘れていただけらしい。


「ごめんなさいね。最近はちょっと立て込んでたから」

「別にいいよ。そういえば、近頃貴族との会合が多いよね」

「ええ。この時期は毎年よ」

「そうなんだ。で、大会に参加する理由は?」


 国中か注目する大会だ。

 さすがにちゃんとした理由はあるのだろうと思う。

 俺が尋ねると、彼女は改まったように口を開く。


「フラン、お父様が貴方に言ったことは覚えているわよね?」

「ああ、もちろん」


 レミリアは頷き、話を続ける。


「あの日、お父様は貴方を認めなかった。理由は単純……貴方には私と釣り合うだけの箔が足りなかったからよ」


 そうだな。

 ただの村人でしかない俺が、王女のレミリアと同等に扱われるはずはない。

 そして、今でもそこは変わっていない。


「この二年で貴方は見違えるほど成長したわ。でも、肝心の箔は二年前と変わっていない。だから、これから取りに行くのよ」

「取りに行く?」

「フラン。大会で優勝しなさい」


 レミリアはハッキリとそう宣言した。

 飾る言葉もなく、家臣に命令するように。


「王国最強の称号を持つ男……そんな相手なら、王女の私とも釣り合いそうだと思わない?」

「ああ、思うよ」

「ふふっ、そうよね。フラン! 優勝して、貴方の存在を国中に示してきて」

「了解」


 そして、十日が過ぎる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 王国主催の武術大会。

 その開催日がやってきた。

 会場となるのは、貴族街の中心部に建てられたコロシアム。

 普段はなかなか入れない貴族街にも、今日だけは平民がたくさん出入りしている。

 開始二時間前から、コロシアム周辺は大賑わいだ。


「相変わらず凄い人の数だね」

「そうね。去年より多いかしら?」

「そんな気がするよ。きっと皆、アドルフさんの戦いが目当てだろうね」

「ええ。去年の優勝は記憶に残っているもの」

「うん。俺もよく覚えてる」


 王族の観覧席から、コロシアムに入場する人が見える。

 俺たちは人混みを観察しながら、話を続ける。


「でも、今年はもっと記憶に残るはずよ。何せ貴方が優勝するんだから」

「いやいや、まだ優勝できるって決まったわけじゃないって」

「いいえ、決まっているわ。それとも自信がないの?」

「自信はあるよ。そのための二年だったんだから」

「そう。なら良いわ」


 二人で顔を合わせて微笑む。

 そのまま後ろへ振り向き、俺は彼に言う。


「というわけなので、負けませんよ? アドルフさん」

「ああ。望むところだ」


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