11.時は過ぎ
朝日が窓の隙間から差し込む。
春夏秋冬と季節は一巡し、また春がやってきた。
程よい寒さを感じて、眠りから意識が戻る。
最初に聞こえたのは小鳥のさえずりだった。
こういう穏やかな朝は、とても気分が良い。
大きく背伸びをした。
ベッドから降りて、服を着替えて、寝癖をとかす。
準備万端で部屋を出ていく。
廊下を歩き、とある部屋の前にたどり着いた。
扉の前には門番のようにメイドが二人立っている。
「おはようございます」
「「おはようございます」」
丁寧なあいさつをし合い、一礼して扉に手をかける。
メイドたちは引き留めたりしない。
部屋に入ると、屋根付きのベッドが目に入る。
そこには、彼女が眠っている。
この国で一番美しい姫が――
「レミリア」
「ぅ……フラン?」
「うん、おはよう」
「おはよう。今日も起こしに来てくれたのね」
頷く。
「別に良いのよ? 気を遣わなくても」
「違うよ。俺がそうしたいんだ」
「そう」
「嫌ならやめるよ」
「まさか。とっても嬉しいわ」
レミリアはニッコリと微笑む。
この笑顔を最初に見たいから、毎朝彼女を起こしに来ているようなものだ。
彼女は布団を退け、ベッドから降りて立ち上がる。
そして立ったまま、俺を見上げる。
「どうしたの?」
「背、伸びたわね」
「それはそうだよ。あれから二年経ってるんだから」
「そうね。もう二年前……」
王都に来て、二回目の春。
俺は十五歳になり、彼女は十四歳になっていた。
二年、もう二年も前になる。
彼女と再会してから、あっという間だった。
「今日はどうする?」
「私はお父様と一緒に、貴族の方々とお話に出るわ」
「一日中?」
「午前中だけよ。午後はまた顔を出すわ」
「了解。じゃあ俺は、朝食の準備を手伝てくるよ。その後はいつも通り鍛錬してるから」
「ええ」
彼女を起こした後は、食堂に顔を出して朝食の手伝いをする。
別に命じられたからではなく、成り行きでやるようになった日課だ。
他にも城の掃除とか、庭の手入れとか。
使用人さんたちの仕事を手伝ったりもしている。
もちろん特訓もかかしていないよ。
午前中は、久しぶりにアドルフさんとの稽古だ。
「すまん、最近忙しくてな」
「仕方ないですよ。アドルフさんは騎士団長なんですから」
「まだ任期半年の新参者だ。慣れてなくて、騎士団の皆には迷惑をかけているよ」
「それはないでしょう。アドルフさんは元から人望が厚いですから」
などとほのぼのした会話の最中も、剣撃をぶつけ合う。
「見違えたな。フラン」
「皆のお陰ですよ」
誰もが言う。
この二年で、俺は強くなったと。
自分でも実感している。
まぁ、肝心の王様は、まだ認めてくれていないのだけど。




