原価計算ってもんがあってだな
午後三時頃、夜の開店準備の為に一旦閉店した。ルドさんが大声をあげる。
「あらま!!まあまあ!一晩の売り上げに相当するよこりゃ」
「ルドさん、儲け出た?」
「ちちち、ただお金を稼げばいいってもんじゃないんだ吉田。原価計算ってもんがあってだな」
「あんたたちの給料を差っ引けば、全部が儲けになるってことだ。……冗談だよ、ほら」
ルドさんから手渡されたのは、鈍く光る銀色の通貨だ。
「ぎ、銀貨!??いいんですかこんなの貰って」
「それぐらい稼いだろ、発案料も含めてさ」
そめちゃんが銀だー!本物だー!って大騒ぎしてておもろいが、俺にその価値はよく分からない。
「で、いつ旅立つんだい」
「まだ何も……どうしたらいいかも……ずっとルドさんのお世話になる訳にはいかない、って分かってるけど」
ルドさんが腰に手を当てて苦笑いする。
「いつまでいたっていいよ、あたしゃ」
「でも、迷惑じゃ」
「男の子なんて、引き留めたっていずれは勝手に旅立っちまうんだ。寂しくてつい予防線を張っちまうのさ」
「……ルドさん、お子さんいたの?」
ルドさんは何も言わず、代わりに窓際の写真立てを見た。その写真には、ルドさんと同じ赤毛の、鎧を着た少年が写っていた。
「アルストロメリアの勇者、だってよ。三年前に手紙を寄越したきりだ。あの写真だっていつ撮ったものやら」
「アルストロメリア……大陸の北の果て、だな。随分遠くで名を馳せたものだ」
ティアさんが呟く。まるで俺たちに言い聞かせるように。
「そうさね、特段用事がないなら、バカ息子に会いに行ってくれないか。たまには帰って来い、顔を見せろって言付けを頼むよ」
その言葉には色んな感情が込められているのが感じ取れた。そめちゃんはメガネを外して目を拭っていた。
「安心しろ、おかみ。俺たちはアオイがここにいる限り、ずっといる」
「かーちゃんが誇れる息子になるために、俺もここで働くぜ!ルドさんよォ」
「あんたらはいつでも旅立ってくれて構わないよ」




