居なくなったら一番困るのは誰だ
次の日から、酒場の仕込み、手伝いの空き時間に、チンピラ改めアリッサムの戦闘指南、ティアさんの魔法指導が始まった。
「とにかく間合いが大事なのよォ、戦いってのは」
「魔法はイメージ。魔素を目に焼き付けろ、目を閉じても脳裏に浮かぶぐらいな」
「吉田、教わるって楽しいな!俺も授業やりたくなってきた」
異世界転生に夢見てたにしろ、そめちゃんの学習意欲に驚いた。先生になるぐらいだ、勉強好きなんだなあ。(ちょっと見直した)
「ジオさんが旅には何かと金かかる、って言ってた。お金稼ぎたいんだけど、ギルドの仕事で儲かるのって何?」
「そりゃ魔物退治だろ。そのためにも強く!もっと強くなれ!!」
そこにルドさんが様子を見に来た。
「あんた、金が欲しいならギルドにとっておきの依頼が来てるよ。西の森にケルベロスが出たんだとさ。賞金、銀貨百枚」
「銀貨百枚ー!!???」
「……ケルベロスか。おいそれと手を出せるやつじゃないな。普通の冒険者なら、な」
「へッ!!チャンスじゃねえか、このパーティならチョロいぜ!俺の腕前見せてやる!!」
なんか勝手にパーティが組まれているが、彼らなしには絶対に勝てないだろうからいっか。
「ケルベロスってなんだっけ吉田」
「あの、犬の頭が三つついたやつ」
「こわぁ」
「アオイ、小太り男。まず装備をきちんと揃えておいで。そんな奇妙な服で魔物に挑む奴はいないよ」
ルドさんに言われて、俺たちは貰ったばかりの銀貨で適当な服と武器を買った。
「おお……旅人っぽいぞ、吉田」
「そめちゃんも悪い魔法使いみたいだね」
「それでこのパーティのリーダーは誰なんだ?」
「「そりゃもちろん俺だろ」」
そめちゃんとアリッサムの声がハモり、場が固まった。
「…………いや、そこは当然俺、Aランク魔法使いである大魔法使いアストランティアであろう」
「あん??魔法使いは後方だろ??リーダーは前線でないとおかしいだろうがよ」
「いやいや、一番の年長者は俺!先生なんだからとりまとめは当然俺がだな」
主張が激しいメンバーたちが言い争うのを俺は遠目に、何日も着ていた制服を洗濯していた。うーん、服を着替えるってこんな気持ちの良いことなんだな。
「埒があかねえ、じゃあ、このパーティで居なくなったら一番困るのは誰だ!?」
「アオイ」「吉田」「かーちゃん」
………なんで三人揃ってこっちを見るんだよ。




