スライムとかにしてほしかった
西の森に来た俺たちはどう考えても浮いていた。
先頭はチンピラそのもののアリッサム。
二番目がリーダーを押し付けられた俺。
三番目が悪い魔法使いみたいな黒いとんがり帽子とマントのそめちゃん。
最後尾がフードで顔を覆い隠し、ぶつぶつずっと独り言いってるティアさん。
「ねえ、おかしくないこのパーティ。勇者いないけど」
「僧侶も欲しかったなあ!誰が回復するんだろうな?」
「おい太っちょ!!勝手に回復アイテム飲むな!!」
「ふふふ……まずアオイの世界を学ばないと……ふふ……」
そもそも最初にエンカウントする予定の魔物がケルベロスなのも大分やばい。スライムとかにしてほしかった。
「いいかァ!?作戦通り、俺がケルベロスを引き付けてぶっ叩くから、その間にティアの野郎がボーンと魔法で決めて、最後俺がシメる!」
「愚問だな。お前の出番はないかも知れんぞアリッサム」
「俺の出番はいつ……」
「「戦闘を見ておけ」」
俺とそめちゃんは戦闘経験ゼロなので離れた場所で待機するしかない。だせえ。
「しかしこれだけ奥へ来ても魔物がいないのは不自然だな、ケルベロスから逃げたか?」
「ヘッ、スライムにゴブリンに、あいつらそんな高等な知能があるかよ!」
「……ねえ、今何か不気味な声が……」
森のさらに奥から、ウゥゥゥゥンと唸るような低音が響く。俺は反射的に身震いした。
「あれが……ケルベロスの声」
「近いな。アオイ、太っちょ、すぐ逃げられる態勢を取っておけ」
「っしゃァ!!!腕が鳴る!!」
アリッサムが片腕をぶん回す。この血の気の多さが今は心強い。
茂みの向こうに巨体が見えた。唸り声が徐々に大きくなっていく。そこにいたのは、項垂れ今にも倒れそうな獣だった。
「ヌゥゥゥゥゥン!!!」
「な、なんだありゃあ!!?」
「…………化け物だ」
俺たちはたじろいだ。
俺の胴体より太そうな腕を持った巨漢が、ケルベロスの太い首を羽交締めにし、地面に叩きつけようとしていたからだ。
「ガァァァァ!!!フヌァァァァァァ!!!」
ズドン、という轟音と共に振動が起き、ケルベロスをは白目を剥き、泡を吹いたまま起き上がらなかった。
「……………」
禿げ上がった頭、剥き出しの両腕、彫りの深い顔にぎらりと光る青い目。その目がこちらを捉えた時、俺は身動きが取れなくなった。足がすくむってこういうことなんだな。
「……バーサーカーだ、まずいことになった」
ティアさんの呟きが、耳の中で響いた。




