エリカの村 三
ふかふかのベッドに横たわると、今日一日の疲れが出たのか、まぶたが自然と重くなる。
少し離れたところにあるベッドのティアさんが、やっとローブを脱いだのにどこかほっとする。
ーーそういえば、ティアさんの綺麗な銀髪は、誰に似たんだろう。お父さんもお母さんも、兄弟の人たちすら銀髪の人はいなかった。
「……起きているか、アオイ」
「うん、起きてるよ?」
「…‥少し、昔話をしていいか」
それは、とても優しい声なのに、どこか寂しそうに聞こえた。
「見ての通り、この村は資源が少なく、交易相手もほとんどいない、寂れた村だ。食事もあれが精一杯の豪華なものだ、恥ずかしいが」
「そんなことないよ、美味かったよ」
ティアさんは転がり、天井を見ながら話を続けた。
「小さい頃、俺は体が弱くてな。畑仕事も、父の仕事の手伝いもろくに出来なかった。両親は俺を常に心配してくれたが、外にはあまり連れ出さなかった。人目にあまり触れないよう、匿ってくれていたんだ」
アリッサムの言葉が蘇る。
働けないお年寄りは人目に触れないところで、ぼーっと過ごしていたと。
働けない者が捨てられる、迫害される可能性があったことが容易に想像できた。
「それに、この髪と目だ。家族にこんな見た目のヤツはいない、あちこち旅をしたが銀の目なんてついぞ見たことがない。随分気味悪がられたよ」
ーーーそれは、ティアさんと初めて会った時。
『生まれた時から忌み嫌われていた』って確かに言っていた。
「親もどこかで、自分たちの子供である確信が持てなかったんだろうな。どこか他人行儀で、優しいのに遠慮を感じていた。後で知ったんだが、魔素の器がでかい奴に、たまに現れる現象らしい」
「そっか、だから魔法使いになったの?」
「ああ、藁にもすがる思いでな」
ティアさんはくすりと笑う。
「働けない、家族と血のつながりがあるかも分からない俺が、魔法だけは人一倍使えると気付いたんだ。使える時間は全て特訓に充てた、文字通り血の滲むような、ってやつだ。今思うと馬鹿の一つ覚えだな」
そんなことないよ、と強く思ったけど、口を挟めなかった。ティアさんの口調は優しく、過去を懐かしむものだった。
「Aランクに成れさえすれば、俺は一人前と認めてもらえる、仲間に入れてもらえるって思ってたんだ。その矢先にあの男と、ジオと会った」




