エリカの村 二
村長の家を出ると、痺れを切らしたジオさんが口を開く。
「おいティア、お前村に入ってから変だぞ?腹でも壊したか?」
「……別に。食事の用意をしてくれている、料理屋へ向かおう」
料理屋にはぎっちりとテーブルと椅子が敷き詰められ、村中の人が集まっていた。
「アストランティア様のご帰還を祝って!!」
立地からして手に入りにくいであろう、肉や魚の料理がずらりと並べられ、見たことのないフルーツが盛られていた。お皿には食用花が添えてある。
「うまーい!!素朴な味だけど、山の中でこんな美味しいお肉が食べられるなんて!」
「そめちゃん、ティアさんの分ちゃんと残しておいてよ」
「……いい、好きなだけ食べろ、ソメイ」
アリッサムもエキナさんも、見慣れない料理を楽しんでいたけれど、ティアさんだけがほとんど口をつけなかった。
「ティアさん?食べないの?」
「食欲がなくてな。心配するな、アオイ。お前は沢山食べろ」
ティアさんは微笑むが、やはり元気なく見える。
ティアさんの元に代わる代わる村の人が訪れ、乾杯をして昔話をしていくが、ティアさんはずっとフードを被ったままだ。
結婚したという妹さんの前ですら、『おめでとう』の一言を発しただけだった。
宴が終わり、宿に向かうのに、ティアさんは俺たちと離れようとしなかった。
「何で来たんだよティア、実家泊まりにいけよ」
「……いや……それならばアオイ、うちに来ないか」
「?いいの?」
家族水入らずのところに邪魔じゃないか、とか考えたけれど、ティアさんの様子がおかしいのが気になって、ついて行くことにした。
ティアさんの家は村長の家と同じぐらい大きく、家の前で女性が立って待っていた。
「ティア、お帰りなさい。そちらの方も一緒に泊まるのね、どうぞ中へ」
微笑む女性はティアさんのお母さんなのだろう。目元がティアさんに似ている気がする。
ドアを潜ると、ティアさんの家族が皆待っていた。
「ティア、ゆっくりしていけよ」
「お兄ちゃん、明日旅のお話聞かせてね」
「ティア、痩せたか?ちゃんと食べてるのか?」
ティアさんは少しだけ笑うと、もう寝ると言って二階へ上がってしまった。




