エリカの村 一
エリカの村は年中寒い気候なのか、植物も少なく、今までの町と比べると色数が少なく見えた。
村に入ると一瞬その静けさにびびる。
「ティアさん、ケルベロスちっちゃくした方がいいかな…?皆びっくりしちゃうかな?」
「いや、大丈夫だ」
「ティアさん?具合悪い?」
「………いや」
フードを被ったままで、よく顔は見えないが、昨日とのあまりの落差に心配になる。
突然ケルベロスが『ばうっ!』と嬉しそうに吠えた。
誰もいないのかと思ったけれど、違った。
俺らの気配を感じたのか、人がちらほらと家の中から、庭から覗いているが、皆黙ったままなのだ。何というかーーー奇妙だ。
一人の老人が近付いてくる。その目は俺たちに、何者なのかと問うてくる。
「ーーーアストランティア、様?」
ティアさんをしばらく見つめた後、老人が村の中心部へ走っていき、からからと鐘を鳴らした。その音を皮切りに、村中から人が集まってくる。
「アストランティア様の帰還だー!!」
「よくぞご無事で!」
「宴の準備だ!!」
帰還、つまりここは。
「ティアさん、この村の出身なの!?」
「すごい騒ぎだ、さすが英雄だね!」
「何だよ一言言えよティアの野郎!」
皆がティアさんに話しかけるが、返事がない。俺たちは互いの顔を見合わせた。
「アストランティア様御一行、どうぞこちらへ」
村長と思しき先ほどの老人について行く。案内されたのは、村で恐らく一番大きな家、たぶんこの人の家なんだろう。
「アストランティア様、こちらの方々はご友人ですか?」
「……そんなところだ」
「皆、いつもアストランティア様の帰りを待ち侘びているのですよ。ご友人の方々も、何泊でも泊まっていってください。何もない、小さな村ですけどね」
木彫りの大きなテーブルに果物と、紅茶の入ったティーカップが並べられる。ケルベロスはすっかりくつろいで、カーペットに座り込んでいた。
「ご両親にはお会いになられましたかな?」
「いや、まだ……」
「是非顔を見せてあげてください。一番下の妹様も、ついこの間ご結婚されたのですよ」
「……そうか」
にこにこと、柔らかく微笑む村長さんと奥さん。温かくもてなされているのに、全く笑わないティアさんが対照的だ。
何だろう、この違和感は。




