役に立たないかも知れないぞ
養老院の依頼は体力仕事ばっかりで、一日が終わる頃にはへとへとになっていた。
それなのに、お別れする時に込み上げてくるものがあった。
すべすべの、しわしわのおばあちゃんの手が忘れられない。シミだらけのおじいちゃんの背中が忘れられない。
エキナさんは号泣していたし、アリッサムもちょっと涙ぐんでいた。
「さて、ジオの過去は大体分かったと思うが」
「ああそうだな、じゃ、俺は用済みってことで
「ビスカリアからはるばるベロニカまで何をしに来た?ジオ。アオイが心配なら、初めから同行すれば良かったじゃないか」
ティアさん、ジオさん相手だとほんと容赦ない。
「ーー違ぇよ、俺は人を探してんの」
「誰だ?おかみの息子じゃないのか?」
「違うな。たまたまお前らと行く先が被っただけ」
「この先はもう北へ行く奴しか通らないが」
ジオさんは下手な嘘が暴かれ、たじたじだ。
「野垂れ死なれたらたまんねーから、途中まで一緒に行ってやるよ」
「え!?本当!?ジオさん来てくれるの!?」
「やったー!これで最強パーティ完成だ!」
「お前は足手纏いだ太っちょ」
やばい、ワクワクする。
Aランクどころじゃない魔法使いのティアさんに、英傑のジオさん。この先どんな敵が現れても勝てるんじゃないかと思えてきた。
「ただな、この先は俺がいても役に立たないかも知れないぞ」
「なんで?ジオさん」
「アルストロメリア地方に行くには、絶対にあの山を越えなければならないからだ」
ジオさんが指差した方角には、頂上に雪の残る、険しい山々が見えた。
「アングレカム、別名『剣の山』。標高が高く、急勾配の箇所が多くて、かつ悪天候が多い。アルストロメリアが独立した地方になった、一つの要因だ」
「……ああ、ピクニック気分で登れる山でないことは確かだな」
そめちゃんが『また登山…』と呟いている。今度こそそめちゃんを担いで登れる人はいないかも知れない。
「しかもあの辺りは魔物も強く、町らしい町はほとんどない」
「えっ、それじゃ野宿……」
「一つだけあるな、小さな村だが」
「じゃあそこに必ず寄ろう!」
そめちゃんの言葉に、ティアさんが少しだけ表情を暗くしたのが気になった。




