ナルシストな訳じゃなかった
観劇が終わって、俺たちは手伝えることを精一杯やったと思う。
お年寄りを抱き起こすのは想像以上に大変だった。動けない人を抱えるのはこんなに重く、怖いことだと思わなかった。
フードを脱いだティアさんはおばあちゃんたちに大人気だった。ファンクラブ出来てた。
エキナさんは肩や腰の痛みを訴えるお年寄りに、癒しの術を使って、お礼に編み物とか飴を山ほどもらっていた。
ケルベロスも大人気だった。寄ってくる人の多さに興奮しすぎて、首が絡まってて大変だった。
「ティア〜〜!歌って〜〜!」
「指差して〜〜!!」
「あらぁ、アタシの推しはアオイよ!アオイ〜〜!こっち見て〜〜!!」
アイドルグループみたいな扱いなのは解せないが。孫っぽいもん勝ちなのかな。
「アオイ〜!!大変、『ス』が人気過ぎて『ケル』と『ベロ』が拗ねちゃったわ!」
「あー、『ス』、気弱なのがウケちゃったかぁ……」
そめちゃんはお年寄りの昔話に沢山質問していた。ここでも勉強熱心か。
「そっかー、理事長がジオさんに惚れ込んでスポンサーになってくれたんだね!いやあジオさんどんだけお金持ちなんだろうと思ったら、そういうことか!」
「やめろ、変なこと聞き出すな太っちょ」
「銅像建てたのも理事長の趣味なんだね!良かったあジオさんがナルシストな訳じゃなかったー!」
「あのな」
ジオさんのことを沢山知れて何となく嬉しい。強いだけじゃなく、困ってる人をほっとけないんだな、この人は。
「か、かーちゃん……お年寄りのパワーってすげえな」
「アリッサム、なんか髪型すごいことになってるよ?」
「皆面白がって触ってくんだよ!ちった怖がれよ!!」
憤慨しているアリッサムがちょっと可愛い、けどパンチ喰らいたくないので黙っておいた。
「かーちゃん、俺、こんな元気なお年寄り初めて見たかも」
「どういうこと?」
「俺の故郷のお年寄りはさ、働けなくなったら皆飯の時間以外は本を読むか、ひたすらぼーっとして過ごしてんのさ。それも人目につかないように」
「なんで?好きなことやればいいじゃん」
「……働けない奴は捨てられるんだよ。特に貧しい村はさ」
アリッサムの顔が暗くなる。俺の世界では当たり前だったことが、この世界では当たり前じゃない、また一つそれを知る。
「だから、あのおっさんがやってること、結構すごいことかも知んねぇ」




