そんなの俺はゴメンだ
「ジオさんは怪我をして働けなくなった人たち、家や財産を失った人たちが暮らせる大きな家があればいいと思いつき、各地に養老院を建てました。その一つがここ、『養老院ルピナス』ですねー」
その言葉を聞いてはっとなった。
ーー銅像があったのは、そういう訳か。
おじいちゃんたちを見る。改めてジオさんを拝む人、中にはすすり泣きする人もいた。
「それでは最後に、ジオさんに一言いただきましょう!ジオさん前へどうぞー」
ジオさんは『えっ』『聞いてねえよ』とぶつくさ言っていたが、職員のお姉さんに引っ張り出されて、きまり悪そうな顔をしていた。
「えー、皆が元気で、幸せならそれでいいと思います。働ける人は働き、働けない人も楽しく暮らしましょう、以上」
ジオさんの言葉に今日一番の拍手が沸き起こった。横にいたティアさんまで大きな音で手を叩き出してびっくりした。
「格好よかったぞ、英傑」
「うるせえよティア坊ちゃん」
ジオさんが溜息をつく。
「なんだあの劇、大嘘じゃねえか。俺は一本しか首落とせてねえし、ティアは出てこないしよ」
「えっ、やっぱりティアさんいたの!?」
「いたともよ、ガチガチに緊張していた若造が」
ティアさんがジオさんを睨む。ジオさんはどこ吹く風だ。
「素敵ね、ジオさんが英傑と呼ばれた理由は、魔物討伐だけじゃなかったのね」
「……事実、あん時はとんでもない被害が出たんだよ。酷い有様だった。魔物退治に全身全霊をかけて戦ってくれた奴らが、引退を余儀なくされてその後どう過ごせと?ただ死を待てってか?そんなの俺はゴメンだ」
ジオさんの言葉には重みがあった。この世界の『働けない』は、きっと俺らの世界と違う意味を持つんだろう。
「ジオさん、何でランク上げないの?その話聞いてたら、CどころかAの頂点でもおかしくないよね?」
「ランクに興味ない」
「興味ないて」
「ギルド通すのめんどくさいし。ランクが上がるほど直接依頼されることが増えるし、色々しがらみがめんどくさい」
「モテるよ?きっと」
「ランク関係なくモテるからいい」
少しでもレベルを、ランクを上げたくて俺たちは必死なのに。ジオさんの考えはよく分からない。




