ベヒモス 四
ジオが空高く打ち上げた火花二つ。合図だ。
「衝撃に備えろ!ベヒモスから離れるんだ!」
ジオから見えるように、わざわざ大きな身振り、手振りで魔法を使ってやる。
頭のてっぺんから爪先まで、体中の魔素が握った杖に集中していく。このイメージが出来るようになるまで、どれ程の時間がかかったろう。
空中からでかい拳が地面を殴りつけるイメージで、ありったけの衝撃をベヒモスではなく、地面にぶつける。
魔素をいっぺんに失った反動で、一瞬視界が白く染まる。だが倒れてる訳にはいかない。見届けなければ、何が起きるのか。次に何をすればいいかを判断する為に。
ベヒモスごと真下の地面は沈んだ。そりゃあ奴の体重は規格外だが、衝撃を加えたぐらいで、そんな馬鹿な。ジオーーーあいつ、何をしたんだ?
「やったか!?」
「あの図体がまるごと地中に消えた……嘘だろ」
「気を抜くな、これで終わりとは思えない!」
体が少し沈んだだけだ。どうする、ジオ?
馬は使わず、自分の両脚に俊敏になる魔法をかける。地面を蹴るように進み、ジオの姿が確認できる距離まで近付く。
ジオは地面に穿たれた巨大な穴の淵にいた。そこからベヒモスの姿を確認しているのだろう。
「相変わらずの正確さと威力だな、ティア」
「お前が落ちなかったのは計算外だがな、ジオ。ベヒモスは?この後どうする、地面ごと破壊しに来るぞ、奴は」
「そりゃあ困るな。俺たちまで串刺しにされたら困る」
ーーー串刺し。
つまり、地中にトゲが生えてるということだ。
「だが、今の大きさではせいぜい爪楊枝程度のダメージだ。でかく育ててやらねえとなあ?」
「承知した。こういうのは、ソメイのが得意かもしれんな!」
合図をした訳でもないのに、俺たちの詠唱が重なる。
完全に俺たちを敵と認識したベヒモスの怒りの咆哮が耳に届く。地中で暴れているらしく、あちこち地面にヒビが入り、絶えず足元は揺れている。
急がねば、俺たちの足元もいつ崩れるか分からない。
「ーーー地面よ、空高くベヒモスを突き上げろ!!」




