ベヒモス 三
「ねえ、俺たちだけで橋を直せないかな」
そめちゃんもアリッサムも、エキナさんすら何も言葉を発さない。それは不可能だと分かっているからに違いなかった。
俺たちが普段いかにティアさんに頼りきりだったかを実感する。実戦経験もあり、判断力、技術力もずば抜けている。
「吉田、気持ちは分かるが、こちらは二人動けないんだ。この世界には宿屋で一晩過ごしたら全回復するシステムはないんだよ」
そめちゃんの言い方に、急に恥ずかしくなる。気ばかり急いて、そんな例えをされるほどに、冷静な判断力を失ってるなんて。
「雨で崩れたって言ってたな、地盤が緩い土地なのかな?俺地学はちょっと分かんないな」
「橋に近付くのすら危ないわね、崖の側から崩れるかも知れないわ。うーん、橋をかける以外に何か方法があれば……」
「魔法で一時的に橋をかけるには、多分範囲がデカすぎて届かないんだろうな…俺よく分かんねェけどよ」
そめちゃんがまたうんうん、と頷きだした。何か考え込んでる。
授業中はこの時間を『そめちゃんの電球ピコーンタイム』とか『自習時間』とかって笑ってたのが懐かしい。
「ティアくん、Aランクじゃないんじゃないかな」
「どういうこと?そめちゃん」
「いやさ、コカトリス戦の時見てたんだけど、強すぎるんだよなあ。戦況判断も冷静で正確だし、空中にいるコカトリスに向かって蔦を伸ばしたり、魔法の効果が及ぶ範囲が広すぎると思うんだよ。俺、魔法使って土の壁出したじゃん?イメージが通用するのって、せいぜい五、六メートル先が限界なんだよなあ、体感」
「Aランクでも十分すごいし、それぐらい出来ても不思議じゃないんじゃない?」
アリッサムまで何か考え出した。
「……変じゃねぇか?なんでビスカリアの酒場なんかに入り浸ってたんだ?あいつの腕なら、バンバン依頼で強い魔物倒して、ガンガン金稼いでたっておかしくねぇ」
「そう、それ!もっと大きな街の大きなギルドにいけるよ、ティアくんなら!」
「俺の勘だけど、実戦経験をかなり積んでないと、ああも冷静には戦えないと思うのよね。それもコカトリスより上のレベルの」
「……ジオさんが、何か知ってると思う。ジオさんも謎だけど」
今は二人の無事を祈るしかないけれど。二人のために、晩飯の買い出しに行ってこよう。




