こっちじゃなくて手元見て
病人には粥だけど、怪我人には何がいいのかなあ。などと思いながら、イモの皮を剥いている。
「ねえそめちゃん、ジオさんに会ったよ。ジオさんが僧侶を探し出してくれたんだ」
「ジオさんが!すごい偶然だな、俺たちの後を心配でついて来てくれてたりして、な?」
いつもと変わらない様子でそめちゃんが話してくれる。人参を切る手がぶきっちょすぎて怖いけど。
「コカトリスはどうなったの?逃げちゃった?」
「あいつは後頭部に魔核があってな。ティアさんが取ってくれたんだけど、特段俺たちに懐いたりはしなかった。ただ、人間を見ると襲いかかるのを止めただけ、みたいな?」
「そっか、……やっぱ全部と仲良くは無理だよなあ」
「うんうん、今回それが分かって良かったかも!」
「そめちゃん、頼むから切るときはこっちじゃなくて手元見て」
毎回ダン!ダン!とまな板を叩くように切るのがとても怖い。
「それで、ジオさんはどうしたんだ?もう帰っちゃった?」
「さっきの僧侶の人の依頼を、代わりに引き受けてくれたんだ。ベヒモス退治だって……大丈夫かな」
「吉田は優しいな、でも、誰も彼もの心配を背負っちゃうと、疲れちゃうぞ?」
「でも、俺たちを、エキナさんを助けるために動いてくれたんだよ?当然じゃない?」
「うんうん、でもな、俺たちは背負えるだけしか背負えないから。自分のキャパを超えてまで頑張る必要はないんだ」
ーーーそめちゃん、こんな時まで俺の心配かよ。
「そめちゃん貸して、俺切るから。お湯沸かしてくれる?」
「おっ、いいのか?吉田は器用だな、助かるよ」
「そめちゃんが絶望的に不器用なんだからね、俺はフツー」
人参は銀杏切り、イモは乱切り。玉ねぎはみじん切りとくし切り。
ほうれん草は根元を十字に切って、根元から茹でる。
かーちゃんが教えてくれたことが、こんなとこで役に立ってるのが不思議だ。
切った野菜を沸かしたお湯に入れる。とぷ、とぷと音を立てて、色とりどりの野菜が湯に沈む。
料理の香りと湯気が心地よい、俺やっぱ家事好きだな。
職業に『主夫』があったら、そこそこのランクにならないかな、などと思い、調味料を湯に溶かした。




