殺傷力ありすぎだろォ!
倒れたエキナさんの上から、翼の生えた蛇の化け物が降ってきた。
「ケルベロス、元に戻れ!」
ティアさんの魔法でケルベロスがみるみる大きくなる。ケルベロスは化け物を睨みつけ、今にも飛びかかりそうに唸っていた。
「アオイ、こいつがコカトリスだ」
「おいコラァ!エキナの兄ちゃんに何しやがる!」
「よせアリッサム!こいつは猛毒を持っている」
猛毒、の言葉を聞いて、エキナさんを見る。顔色が青白く、苦しそうに呻いていた。
「……アオイ、ケルちゃんを止めて。あの子が噛み付いたら、コカトリスを殺してしまう」
「エキナさん!待ってて、薬草を……」
「アオイ、避けろ!」
ティアさんが叫ぶのが少し遅かったら、俺はコカトリスの爪をまともに喰らっていた。
「くそ、殺傷力ありすぎだろォ!」
アリッサムが俺をかばうように前に立った。なんて情けないんだ、リーダーのくせに。
ティアさんがケルベロスに『待て』をしつつ、魔法を唱える。その横でそめちゃんが両手を地面につき、赤土の壁を作り出していた。
「いいぞ、ソメイ。チャンスが生まれた」
「ティアくん、指示を頂戴!次は何をすればいい?」
「俺は後ろからヤツを叩く。お前は前方で注意を引く、できるか?」
「オッケー!やってみる」
ティアさんの雷撃がコカトリスを狙って落ちるが、その翼で容易く避けられる。コカトリスは土壁をかいくぐってティアさんに狙いを定める。
そめちゃんは指をぱちん、と鳴らし、火炎放射器の様に手から炎を出した。
コカトリスがその炎に気を取られた一瞬、ティアさんの杖から蔦が伸び、コカトリスの脚と翼をがんじがらめにした。
飛べなくなったコカトリスが暴れ、落下するところを、アリッサムが抱き止めようとした。その衝撃は凄まじく、アリッサムごとコカトリスは岩肌に激突した。
「うがァッ!!」
「アリッサム!」
「かーちゃん来るな!毒を撒かれる!!」
マジで何の役にも立てない。俺は何をしたらいい?
「アオイ、ケルベロスに乗ってエキナをベロニカへ運んでくれ!時間がない」
「!分かった」
エキナさんの顔色はさっきより悪くなっていた。もうほとんど声も出さない。
険しい顔のままのケルベロスに話しかけ、なだめる。ケルベロスはエキナさんの顔を舐めると、キュウンと悲しげに鳴いた。
ティアさんが魔法で鞍とあぶみを付けてくれ、エキナさんを俺の背中に蔦で固定してくれた。ケルベロスにまたがり、俺は叫んだ。
「みんな!アリッサムを頼む!」
ケルベロスは風のように山を駆け降りた。俺は揺れとエキナさんの重みに耐えつつ、落ちないように手綱にしがみつくのが精一杯だった。
馬車の時よりあちこち痛いし、怖いけど、そんなことより早く、早くと願っていた。




