馬車より乗り心地が悪そうだ
『ベロニカ』のギルドは、赤い壁に乱雑に依頼や尋ね人のチラシが貼ってあり、人で賑わっていた。
「受付お願いします、あと依頼一覧見せてください」
「はいよ、登録はしてあるんだよね?名前ちょうだい」
紙の台帳にぎっしり書かれた文字。ここはアナログなんだ。
「吉田、あれ……羽のモンスターの情報依頼、出してみたらどうだろう」
「いいね、あの、依頼を出す方もお願いできますか?」
俺、びっくりするぐらい、いつも通りの声だ。昨晩の出来事は夢だったんじゃないか、って思うぐらい。
「優先度高い順だよな?うーん、冒険者パーティの欠員募集、魔物退治、呪い解除……」
「魔核を取るなら『コカトリス退治』はどうだ?アオイ」
「困ってそうなのは『橋が壊れて渡れない』とかもあるわよ!どうしましょうね」
皆が俺の意見を汲んで悩んでくれている、一番弱いのに、リーダーだからだ。
「コカトリス、行こう。橋の修復とか呪いは俺たちでも何とかできるかな?」
「力仕事なら得意だぜかーちゃん!」
「呪いなら俺の管轄よ、アオイ!」
「勇者がいなくても何とかなるもんだな!このパーティ、なかなかバランスいいじゃないか。なー吉田」
「俺いなくてもいけそうだけどね……」
「「それはダメ」」「駄目だ」
そめちゃんが笑いながら肩を叩いてくる。痛い。
笑顔が可愛いというなら、そめちゃんの方が笑顔が似合うと思うのに。こんな優しい先生が転生するなんて、世界はなんて残酷なんだろう。
「コカトリスってどんな生き物?」
「鳥の頭に蛇の体、竜の翼を持つ。生粋の戦闘好きだ、厄介だぞ」
「魔核を抜いてもオトモダチになれるかしら……」
町を離れて、南西の岩山へ向かう。赤茶けた岩に切り立った崖、グランドキャニオンってこんな感じかな?
そめちゃんが『登山…』って呟いたのが聞こえてきた。登るの大変なんだよねそめちゃん。
「いっそ担いでくか?太っちょ」
「馬車より乗り心地が悪そうだ」
「一言多いんだよティアの野郎!」
軽口叩きながら、細い交易路を登っていく。見晴らしがよく、眼下にベロニカの町全体が見えた。
大きな谷を跨いで二つに分かれた町は、橋が象徴的だった。あれが壊れてたら皆大変だろうな、やっぱり直してあげたいな。
「少し前に大雨が降り、崖崩れがあったようだ。橋をかけたくとも足場が不安定で、修理できないようだな」
「アオイは優しいわね、優しさが顔に滲み出てるわ」
そう言って微笑んだエキナさんが、突然倒れた。




