↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/61

強がりを突き通そう

長旅の疲れと夜遅くまで飲んで食べていたおかげで、皆泥のように眠って、起きたのは昼過ぎだった。


「……のど、かわいた」


蛇口を捻る。水をコップに注ぎ、一気にあおる。冷たい水が体に沁みた。

洗面台の鏡を見る。クマが酷い俺と、後ろにすごい寝相のそめちゃんが見えた。


どうしたらいい?俺だけ『帰れるかもしれない』という選択肢が出てきて、一番相談したい人にだけは絶対に言えない、なんて。


でも、キツネ娘にはまだ帰らないって言ってしまった。強がりだったとしても、このまま帰ったら絶対後悔する。その選択肢がある限り、俺は甘えてしまうから、強がりを突き通そう。何があっても。


「……アリッサムたちは起きたかな」


廊下に出ると、受付の人に『おはようございます』と言われる。もうおはようの時間ではないが、お辞儀を返した。


宿の外で一人、稽古をしているアリッサムが目に入る。


「…かーちゃん!おはよ」

「おはよ、昨日なんか聞けた?」

「何も。そもそもアルストロメリア行ったことのあるヤツが少ねえのかな」

「そんなに遠いの、アルストロメリアは」

「この国の北の果てだからな。それに、行くにはとんでもなく険しい山を越えなけりゃいけねえ」


一つの疑問が浮かぶ。ルドさんの息子は、何でアルストロメリアに行ったのだろう。そんなに魅力的な土地なのかな。


「アリッサム、本当のかーちゃんに会いたくないの?今のアリッサムなら、かーちゃんきっと褒めてくれんじゃない?」

「…………本当のかーちゃんは、ずっと眠ってる。俺のこともきっと分かんねぇよ」


何気ない言葉がひどく無神経だったことを恥じた。後悔してももう遅い。


「……ごめん」

「謝るなよ、かーちゃん何も悪くねェ。俺は寝たきりのかーちゃんの世話を、家族に押し付けてフラフラしてる、最低なヤローだ」


アリッサムは本当に、出会った時から変わったと思う。きっと俺と同じで、まだ旅を続けたい理由が、アリッサムの中にあるんだろう。


「アリッサム、また稽古つけてよ。しばらくサボってたから、鈍っちゃったけど」

「おう、いいのか?じゃあ組手からやるか。……かーちゃん、ズボン破れちまったんだけど……」

「布あてて、縫っておけばいい?裁縫あんまり上手じゃないけど」

「履ければ何でもいい、サンキュな」


なかなか強くはなれないけど。

料理をして、洗い物して、洗濯をして、掃除をして。

心が整っていく感じがする、すべきことが見えてくる気がする。

そういう役立ち方もあるよね、きっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。