神からお前に伝言じゃ
そめちゃんは早速他のテーブルに絡みに行ってしまった。俺も何か話しかけにいかなくちゃ。なるべく和やかなテーブルがいいな、などと思い店内を見渡す。
ーーー窓の外にいつぞやのキツネ娘がいた。
びっくりしすぎて炭酸水の入ったコップを落としそうになる。
ドアを開けてやると、キツネ娘が耳をひっくり返し、鼻を塞いだ。動物には色々キツいのかも知れない。
「お前、肉はどうした」
「あ!ごめん、忘れてた……」
「待っておったのだぞ」
キツネ娘はご立腹だ。仮にも神様の眷属、何かお供えしないと祟られるかもしれない。俺は仕方なしに店内にキツネを案内した。
「……うるさい、煙がくさい」
「そうだな、人間はタバコ吸うからなあ。でも美味い肉、食べれるぞ」
「まことか」
店員さんにおすすめの肉を頼む。十歳前後に見えるキツネ娘を見て、怪訝な顔をしたが、特に何も言われなかった。ひとまずほっとする。
「ベロニカ名物、猪肉のステーキだよ!」
運ばれてきた肉にキツネ娘は目をぱっと輝かせた。フルーツが添えられて、たっぷりとソースがかかっている。
キツネ娘はフォークの使い方が分からないのか、じっと俺を見てきたので、仕方なしに切り分けてやる。
「箸はないのか」
「無いだろうなあ、ここ日本じゃないし。ほら、あーん」
キツネ娘はするどい牙をちら、と覗かせ、肉にかぶりつく。美味かったようで、頬を押さえていた。
「なあ、この世界には神様が存在するのか?神様は願い事、叶えてくださるのか?」
「……神はそんな都合の良い存在ではないし、万能でもない。我らの神様は豊穣を司っておる」
「豊穣かぁ……旅の安全とかが良かったなあ」
「だがお前より力はある」
「そうだろうね」
早く次を、と催促するキツネ娘は、普通の女の子にしか見えない。何故この子は俺たちの前に度々現れるんだろう。
「君、何でついてくるの?お供えが欲しいから?」
「そうそう、神からお前に伝言じゃ。お前に会いたいと強く望むものがおる、戻ってやらぬか?」
「……どういうこと?」




