あたしと同じ、親不孝だ
「『ベロニカ』か……ここから更に北の、交易が盛んな街だな」
ティアさんが魔法で宙に光の地図を開きながら言う。
「俺も行ったことはない。皆は?」
皆が首を横に振る。つまり全員、初めての街ということだ。
「進行方向だからいいね!寄ろう、寄ろう」
「カルミアからは少し遠いが、宿泊地の心配などは大丈夫か」
「野宿はなるべく避けたいなあ、途中に村とかある?それか、馬車でも乗ってみる?」
皆の顔を見ると、苦虫を噛み潰した顔をしていた。俺とそめちゃん以外、皆乗ったことがあるらしい。
「……ティア、空飛ぶ魔法とかないのかよ」
「無い。少なくとも俺は使えない」
「お、お尻が……ふっかふかのクッションを人数分用意しましょう!!」
「そんなに乗り心地悪いの……?」
「「悪い」」「クソだ」
不安半分、期待半分。そめちゃんの目は完全にキラキラしてるので、多分乗ることになるだろう。
「おーい」
遠くから走ってくる女の子がいる。オルレアさんだ。
「この町を出るのか?次はどこに行くんだ?」
「次はベロニカっていう街に行こうと思うんだ、オルレアさんたちは公演、いつ行くの?」
「大体一ヶ月後だな、ビスカリアなんだよ」
「ビスカリア!!懐かしいなあ。もし良かったら酒場、『ルド』に寄ってね!料理美味しいよ〜〜」
そめちゃんが生唾をごっくん飲み込んだものだから、美味しさアピールが半端なかった。
「なあ、あんたたち、何で旅してんの?この犬は何?頭三つあるけど」
「俺たち人を探してるんだ。酒場のおかみの息子、勇者なんだって」
「へえ!すごいじゃん、でもそいつも家を長い間空けてんだ……あたしと同じ、親不孝だ」
「オルレアさんは帰ってきたじゃん」
「でも、いなくなってる間にじじいが大分弱っちゃった……もっと、側にいてあげればよかった」
エキナさんの腕の中から、ケルベロスがばう!と吠えた。頭を撫でてるオルレアさんの手を舐めて、慰めてるみたいだ。
「スカビオサ病って、治らないの?」
「治療法は見つかっていないな……」
「でも!世界中を旅したら、もしかして治療法あったりしないかな!?アイテムとか、魔法とか……」
皆が黙ってうつむく。『そんなものは無い』と答える代わりに。
「あらあ、可愛いワンちゃんね」
「あ、これは……」
「うちのカバちゃんも見て頂戴……あら!こないだはありがとうねえ」
カーバンクルを抱っこして現れたのは、あのおばあちゃんだ。
「ねえ、もしかしてその子も魔物なの?」
「『も』って…魔物!?えっ、これも、それも?」
「はい、ケルベロスです。今はかなり小さくなってますが」
オルレアさんが目を丸くした。当然だ、人間に懐く魔物なんて見たことないだろう、それも二体。




