そこには愛が溢れている
「こちらが報酬になります」
ギルドで報酬の銀貨一枚を受け取る。
実はここに来るまで、押し問答があった。だって俺たち何もしてないし。
***
「依頼達成のサイン、受け取れません。結局バレちゃった訳だし、おじいちゃんが元気でたのはオルレアさんのお陰……」
「いいえ!孫になり切っていただいた訳だし、私も新たな性癖に目覚……ゴホン、とにかく受け取ってください」
「そうですよ、女装なんて勇気がいったと思います。オルレアはアオイさんを少し見習いなさい」
「んだとじじい!チケットやらねーぞ!!」
「オルレアはその……昔から口が悪くて」
おじいちゃんとオルレアさんが取っ組み合いの喧嘩をしていると、そめちゃんが言った。
「依頼の内容はこなした訳だし、受け取らないとオルレアさんたちが『依頼を達成したのに報酬を払わない』と評価されてしまうんじゃないか?」
「そうですよ!どうしても、と仰るなら、アオイさんの写真一枚撮らせてください!」
「なんで」
***
という訳で、俺の女装写真一枚で決着がついた。
エキナさんがちょっとそわそわしている。ケルベロスのことだろうな。
「ケルベロス、心配?」
「え、ええ……喧嘩してないかな、とか、心細い思いしてるんじゃないかなとか……」
「町に入るには目立ちすぎる、透明化の魔法をかけておいたが、奴の強さを考えたらまあ大丈夫だろう」
「でも……」
「ちょっと様子見に行こうか」
ティアさんが透明化解除をし、町の外にいたケルベロスは、俺たちを見るなり『わふっ!』と鳴いて尻尾を振った。
エキナさんが三つの頭を順番によしよしすると、尻尾を勢いよく振り、エキナさんの顔を舐めまくった。
「……やっぱりちょっと可哀想だね」
「カバちゃんを見た後だと、羨ましくなっちゃうわね……」
それを聞いて、そめちゃんが口を開いた。
「なあなあ吉田、小型化の魔法とかないのか?俺じゃ使えないかな?」
「小型化……あるが、魔物であることはバレてしまうぞ?良いのか?」
「カバちゃんが平気なら、ケルちゃんたちも大丈夫じゃない?こんなに可愛いんだもの」
エキナさんとケルベロスたちが見つめ合う。いかつい男と中堅の魔物が対峙する図なのに、そこには愛が溢れている。
ティアさんが魔法陣を描き、その上に座ったケルベロスはたちまち体が縮んだ。中型犬サイズになったケルベロスは、エキナさんの腕の中にすっぽり収まった。
「これで町の中を一緒に散歩できるわね!」
「……戦闘の時は解除すればいい」
「それでもケチつけてくるやつがいたら、俺が許さないからね!ケルちゃんたち」
「ばう!」
多分誰も何も(怖くて)言えないと思う、と思ったけど黙っておいた。




