百点満点の吉田あおいちゃん
依頼主のおじさんは、俺を見るなり口元を抑えた。
「……オルレア」
アリッサムたちはおお……と呟いた。
「少し離れて見れば、女性だ」
「足をもう少し閉じれば」
「うんうん、百点満点の吉田あおいちゃんだ!」
何故か分からないけどそめちゃんの一言が一番ムカついた。
「それで、どんな話をすれば……?」
「祖父の話に相槌を打つだけでいいですよ。祖父はお喋りなんです」
「声は?高い方か?孫」
「やや低いですね。地声で大丈夫だと思います」
なるほど。そういう細かなところも気をつけなければ。
おじいちゃんの部屋は、家の一番南側、日当たりのいいところだった。元は子供部屋だったのかもしれない。
「……おじいちゃん?」
ノックをして、そっとドアを開ける。どうしてもバレるのが怖くて、恐る恐るの動作になってしまう。後ろには心配そうにおじさんが付き添ってくれていた。
「……オルレア?オルレアなのか!?」
おじいちゃんは目を見開き、こっちへおいで、と手招きした。
「……久しぶり」
「本当に久しぶりだねえ!オルレア、一段と可愛くなって。そのワンピースがよく似合うよオルレア、それはばーさんの…」
「そうだよ、母さんが縫ってくれたワンピースだ。オルレアは本当にこの服が大好きだったね」
「オルレア、また劇を見に行っていたのかい?お前は本当に劇が好きだねえ。何だったかい、星灯の……」
「星灯の乙女だね。オルレアはその話、もう二十回は観てるのに、まだ観たいんだって言ってたね。グランヴェルの王子様が本当に格好いいんだってさ」
「そうだった、『推し活!』『全通!』って教えられたけど、さっぱり分からなかったねえ」
オルレアさん、何やってんの。てかこの世界にも浸透してるんかい推し活。
「……ありがとうね、ぼうや」
「え、っ」
心臓の音が耳元でどく、どくとうるさい。指先が固まったみたいに動かない。
「その姿を見るまで、オルレアの大好きだった服も、交わした言葉も、皆忘れていたよ。あなたのお陰で思い出せた。本当に……」
おじいちゃんが静かに涙を流す。丸まった背中を俺は撫でることしか出来なかった。
唐突に後ろのドアが開く。部屋に、廊下にいた誰もが驚いた。
……ドアを開けた張本人も驚いていた。
「えっ、キモっ、あたしがいる」




