このミスマッチさが絶妙よね〜〜!
依頼主の家に行くと、息子らしきおじさんに怪訝な顔をされた。
「あの、女性をお願いしたんですが……」
「でもこの子、条件にかなり近いと思うんです!!ウィッグとスカートで何とかならないかしら!?俺が変身させてみますわ!」
エキナさんの純粋な親切心に、おじさんは押されているようだった。それか怖いだけかもしれない。
「……おじいさんは、何の病気なんだ」
「末期のスカビオサ病です、もうほとんど歩くことも、食べることも叶わなくて」
場がしん……と静まる。こういう時、何ていったらいいか分からない。
「あの!お孫さんの写真、借りてもいいかしら!?この子を変身させて見せますわ!」
「いいですけど……父、目は悪くないので、女装だとバレないようにお願いします」
責任重大になってきた。もしかして俺、女性を演じきらなきゃいけない!?
エキナさんと一緒に婦人服の店を訪れる。写真の中のお孫さんは、青いワンピースを着ていた。長い黒髪を三つ編みにし、照れくさそうに微笑んでいる。
「いらっしゃ……ヒャッ!!?」
「すみません、こんな感じのワンピースありますかしら!?あら、このドレス素敵ね!」
店員さんが驚いているが、無理もない。婦人服に縁がありそうな人が一人もいない。そしてエキナさんは初見、男でもビビるぐらいガタイが良い。
「俺の体がもう少し細ければねえ……やだ、このカーディガン可愛い!!ねえこのスカンツ、裾のレースが凝ってるわねー!やだサロペット、ベロア素材が素敵ー!!!」
エキナさんがまくしたてる様子に、店員さんがおや……?という顔になり、あっという間に打ち解けてしまった。俺は何を言ってるのかよく分からないけど、エキナさんの心はガチで女性なんだということは分かった。
エキナさんの見繕ったワンピースとウィッグを身につけ、試着室を出た。デカい鏡の前に立った俺は、写真のお孫さんに見えなくもない……十メートルぐらい離れて、目を細めれば。
「あらあ!お似合いですよ!」
「素敵〜〜!!アオイ、完璧に『孫』よ!あとは身のこなしと喋り方ね!」
「余計な肉の一切付いていない体に、ちょっと目立ってきた喉仏……これはときめいちゃうわね!」
「あらあ、分かります?このミスマッチさが絶妙よね〜〜!!」
店員さんとエキナさんが何やら盛り上がってるが、なんかあんまり理解したくなかった。
服装の会話は「現代だったらこんな感じなんだろな」と思って読んでください(о´∀`о)




