懐くというより、服従
翌朝おばあちゃんに報告しに行くと、カーバンクルを見て目を輝かせた。
「まあ!!こんな可愛い生き物だったのねえ」
エキナさんがおばあちゃんにカーバンクルを引き渡す。カーバンクルはおばあちゃんの手の匂いを嗅ぎ、かぷりと軽く噛んだ。
「きゃっ!オイタしたわねアナタ」
「もう!カーバンクルちゃん、メッ!」
エキナさんに凄まれ……注意されると、カーバンクルは耳をぺたん、と寝かせ、おばあちゃんの手を舐めはじめた。
「エキナさんには懐くし、言うこときくんだね」
「いやあれは懐くというより、服従……
「シッ!!」
そめちゃんがティアさんの口元を覆う。やっぱり怖いんかい。
「おばあちゃん、魔核を取ったから多分人へ攻撃はしてこないと思う。いたずらはするかもしれないけど……それは元々、この子の性格なんだと思う」
「そうかい、ありがとうねえ。貴方たち、すごいわねえ。畑荒らしの犯人も捕まったし、こんな可愛い子がうちに来たし、いいことずくめだわ」
「それでね、おばあちゃん。お願いがあるんだ。俺たち、魔核を取ってしまえば、全ての魔物を殺さなくても済むかもしれない、と考えていて……」
おばあちゃんが考え込んでいる。
魔物は人間を攻撃するもの、魔物は倒すもの。それが常識である世界で、覆すのは簡単なことじゃない。
「私はね、それでもいいと思うの。ただ、町の人には魔物に苦しめられた人もきっといると思うわ。家族を殺された、家を失った、とか……」
「……そうですよね、そんな簡単には……」
「だけど、この子は少なくとも『そう』では無くなった訳でしょ。これは事実。井戸端会議で自慢しちゃうわ、うちのカバちゃん可愛いのよー!って」
「「カバちゃん」」
おばあちゃんの名付けセンスはさておき、カバちゃんはあの硬い殻でいつでも人を傷つけられる。なのにそれをしない、ということは、そういうことだ。
「これでサンプル数二体だな、吉田!」
「カーバンクルはそこまで気性が荒い魔物ではない。ただ、好戦的な魔物、人を餌だと思っている魔物など、味方にするのが難しい魔物はいくらでも存在するぞ」
「そうだね……全部を仲間に、とはいかないと思う」
俺は今、たまたまラッキーが続いてるだけかもしれない。優しい人に出会えて、たまたま魔物に襲われずに済んで。この世界には、魔物を恐れてる人、憎んでる人がきっと沢山いる。
「ただ魔核を取ることに、何かの意味はあるよね?そめちゃん」
「どうだろうな?その意味は吉田自身が考えてみよう。先生の立場で発言すると、こうなっちゃうんだよな」
そめちゃんは時々意地悪だ。でもそういう時、決まって優しい顔をしているんだ。




