お前が私を呼んだのだろう
こんこん、そこのお前。
「ーーー誰?」
肉、美味かったぞ。お代わり、ないのか?
「……まさか、あの時のキツネ……また夢に出てきたのか」
夢ではないぞ、お前の前に出てやるぞ。
あんな住み心地の良い家を作られたら、神様の元へ戻りづらいではないか。
「ーーーはっ」
目が覚める。横のそめちゃんからはイビキが聞こえる。まだ起きるには早かったか。
俺たちは『カルミア』という町に寄り、初めて酒場以外で一晩を過ごした。
ベッドはふかふかだけれど、何だか体のあちこちが痛い。緊張してるのかも。
「これ、お前。アオイと申したか?」
「ぎゃっ!!お前、夢のキツネ…!!」
「お前が私を呼んだのだろう」
「……呼んで、ないけど」
「社を建てたではないか。あれは私たち眷属が、神様とお前たちを結ぶ道になる」
「は、はあ」
目の前にいるのは、紛うことなく、夢に出てきたキツネ娘だ。
キツネの面を頭に乗せた、黒髪おかっぱに真っ赤な着物の少女は、自前の尻尾を梳かしている。
「で、お代わりないのか」
「肉が欲しいの…??キツネなんだから自分で獲れよ」
「眷属である私に狩りをしろと申したか?無礼か?」
「分かったよ、今日町で探してやるから」
何だかよく分からないけど、神社から出てきたものだから、下手に扱うとバチがあたりそうだ。
「んー……吉田?誰かいるのか?」
「キツネが一匹……いや、ひとり」
「キツネかあ、可愛いな……迷い込んじゃったのかな」
キツネ娘がぎょっとする。そめちゃんはメガネを外していて、よく見えないらしくすごい目つきが悪い。
「用事を思い出した、じゃあな」
「あ、待てキツネ娘」
キツネ娘は何もない空間に、まるでドアでもあるように飲み込まれていった。
「なにあれ」
「うー、メガネ、メガネ」
「そめちゃん手に握りしめてるよ」




