旅に出なきゃダメ、すかねえ
「今日も賑やかだな」
「お陰様でね。ジオさんも足繁く通ってくれるから嬉しいねえ」
アリッサムの腕相撲、ティアさんの手品にエキナさんのマッスルショー。エキナさんは最初恥ずかしがっていたが、その筋肉を見に沢山の人が押しかける様を見て、『喜んでもらえるなら』と、堂々とポーズを決めてくれるようになった。
ケルベロスはなんかいるだけで皆銭を投げてくれる。拝んでいく人までいた。
「荒っぽいのが『ケル』、人懐こいのが『ベロ』、怖がりなのが『ス』よ。覚えた?アオイ」
「何となく……いつも『ケル』が『ス』に吠えて、間を『ベロ』が取り持ってない?」
「その通りよ、アオイ!!首の配置が違ったら大変だったわねぇ、この子」
俺たちの会話についていけない……とため息をつくジオさん。この人貴重なまとも枠だよなあ。
「それで、旅の準備は順調なのか、お前さん」
「毎日修行してある程度の素手と魔法の攻撃は身につけてきたよ、お金も少しずつ溜まってきた」
「銀貨貰ったろ?ギルドの賞金の」
「あれはやっぱりルドさんにあげようと」
「バーカ、ガキが変な気遣うな」
ジオさんに頭をわしゃわしゃと撫でられる。
「あのさ、バカにしてる?」
「癪に障るだろ。一番そういうの気にする年頃だよな、お前さん」
ジオさんは意地悪く笑う。ムカつくけどやっぱり格好いい。
「あとは剣なんだよなあ」
「やめとけやめとけ。自分の首でも刎ねたら大変だ」
「教える人が上手だったら大丈夫じゃない?ねえジオさん」
「俺は教えるのに向かない」
ちぇ、ここにジオさんがいたら完璧なパーティなのに。
「ていうか、お前さんらのパーティ、女が一人もいないじゃないか」
「エキナさん女性っぽいですよ」
「そうじゃねえよ、華がねえっつうの」
「?冒険に花、いります?」
「いるいる、士気に関わる」
女の人いたら危なくないかな、と思ってしまう俺はガキなのかな。また馬鹿にされそうなので黙っておいた。
「あーだこーだ言って、結局ここを離れたくないんじゃないのか」
図星だった。
ここには出鱈目に強い魔物は出ない。アリッサムとティアさん、エキナさんで難なく倒せる敵ばかりだ。
ルドさんのところで働くのは楽しい、俺家事向いてるみたいだ。何よりルドさんのご飯は美味い。
「……旅に出なきゃダメ、すかねえ」
「別に駄目じゃないさ。一生生まれた町から出ない奴だっていくらでもいる。お前さんが『何を成したい』か、だな」
ジオさんが外に出たので、俺も着いて外に出る。空には信じられない数の星が見えた。
元の世界にいても、やれ進路だ進学だってせき立てられて。やりたいことなんて見つかっていなくて、モラトリアム欲しさに大学へ行くようなものだ。
「なんか、俺と皆が幸せなら、それでいーかなって」
「クソ、ムカつくぐらい幸せな頭してんなお前」
ジオさんに頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。もうそれ八つ当たりでしょ。




