お前は人たらしだな
翌日、ギルドでケルベロスの『魔核』を渡した。おじさんは目ん玉が落っこちそうなほど見開いて驚いていたが、本物だと分かるとずっしりとした麻袋をカウンターに置いた。銀貨百枚だ。
「いやぁ……本当に倒しちまうとはねえ」
「じゃあこれ、エキナさんどうぞ」
「えっ!?何で俺??」
「だって倒したのエキナさんだし」
「いやだわ、俺はたまたま居合わせただけよ。受け取る資格なんてないわ」
「でも、俺たちが倒した訳でもないし……」
エキナさんは俺を見るなり、微笑みながら頭に手を置いた。
「じゃあ、酒場のルドさんに渡すのはどう?お世話になってるんでしょ」
「うん、いいと思うよ吉田。あんなに良くしてくれたんだし」
エキナさんがにこにこと頭を撫で続けている。子供扱いされているようで微妙な気持ちになるが、文句を言うのはやっぱり怖いので黙っておく。
酒場に戻り、ルドさんに渡そうとしたら断られてしまった。
「旅に出るなら金がいる。持ってきな」
「でも、俺たちルドさんに世話になりっぱなしで」
「出世払いでいいよ、行く先々で酒場『ルド』を宣伝してくれたらなお嬉しいねえ」
「!分かった、話しとく」
この世界に来て、最初に会えたのがルドさんとジオのおっさんで、俺たちは本当にラッキーだ。
「それにしてもアオイ、貴方掃除、上手ねぇ…」
「かーちゃんは料理も上手いんだ!あのカリッと焼かれた肉、また食いてぇな」
「教え子が褒められてると鼻が高いな!なあ吉田」
「そめちゃんに家事教わってないけどね……」
夕暮れ時、間もなく開店という時に何日振りかのジオのおっさんが訪れてきた。
「なあおかみ。あの表のケルベロス……」
「ああ、アオイの連れの連れだとよ」
「あんなの置いて大丈夫か?襲ってこないのか?」
「アオイに聞きな」
ジオのおっさんは怪訝な顔で俺を見る。
「また増やしたのか。お前は人たらしだな」
「知らないよ、勝手に皆ついてくるんだ。ケルベロスは大丈夫、魔核を抜いてるし、飼い主に懐いてるから」
「懐くぅ!?魔物が?」
ジオさんでも驚くことってあるんだなーとぼんやり見ていると、エキナさんがにこにことお水を差し出してきた。
「お、お前……狂戦士のエキナじゃないか」
「ジオ!?ジオさんなの?まあ久しぶり!それと狂戦士は誤解だってば、僧侶よ?俺」
「知り合いなの?二人」
「うふ、旅の途中で出会ったのよね。魔物に襲われてるところを助けてもらって。あの時のジオさん、格好良かったわ」
「いや、俺が来た時にはもう魔物は全滅していてだな……」
「またまたぁ!俺にそんな力も度胸もないってば!!」
エキナさんが恥ずかしそうにジオさんを叩く。ジオさんは本気で痛そうにうめき声をあげた。




