ボスが来たわ!
「それじゃ、俺たちはこれで」
「待ってください!!あの、俺一人じゃとても……この森を抜けられなくて」
エキナさんがもじもじしている。すごい見た目とリアクションが合っていない。
「怪我されたパーティ、一緒に探してくださらない、かしら」
「おワーーーッ!??じ、冗談だろ!??俺らが束になってもあんたにゃ敵わな…
「分かりました、一緒に探しましょう」
「吉田!?」「かーちゃん!???」
「僧侶のあなたがいてくれた方が、俺たちも助かるし、一人で心細かったでしょう。腕に自信のあるアリッサムや、魔法使いのティアさんがいます、きっと力になれますので」
パーティの全員が俺をすごい目で見る。しかし理由をここで話す訳にはいかない。リーダーを信じてくれ、の思いでお願いポーズを取る。
皆やれやれ、と観念したようだ。
エキナさんが歩きながらあら可愛いお花、とか可愛いウサギさんねぇ、とか話しているのを聞くと、とても先ほどケルベロスを素手で倒した人物とは思えない。
しかし身長は二メートルをゆうに超えているし顔面は間違いなくコワモテの部類である。
しばらく歩くと、魔物の群れと輪になった人間を見つけた。
「おい、誰が魔物に襲われているぞ!」
「チィッ、ゴブリンの群勢か!」
「よよよ吉田、あの真ん中の女性、怪我してないか!?ち、血が…!!!」
「彼らだわ!すぐにでも治癒してあげたいけど、これじゃ近寄れない!!」
いや行けるだろ、と誰もが思ったが、誰も口にしなかった。エキナさんが怖いからである。
「オルァ!!!てめーらの敵は後ろだクソゴブリンどもめ!かかって来いよォ!!」
「ガァ!??」
ゴブリンがこちらに気付いたようだ。ギャアギャアとわめき、体をこちらに向けた。
アリッサムが先頭の一体にタックルし、木に叩きつけると、残りのやつらが一斉に飛び掛かる。そこへティアさんの炎の魔法が襲いかかり、ゴブリンは散り散りになった。
「今よ!貴女、傷を見せて!」
「キャアァァァァ!!!!助けて!!ボスが来たわ!!!」
「可哀想に、怖さのあまり錯乱してるわね……もう大丈夫よ!」
エキナさんの指から出た優しい光が、弓使いの女性を包む。肩、腕、頬から流れていた血が止まり、傷口が塞がっていった。
ふと後ろを振り返ると、逃げたと思われたゴブリンたちがアリッサムに襲いかかろうとしていた。まずい、この数ではアリッサムでも分が悪い。残りのゴブリンはティアさんにも群がっていた。
圧倒的に不利な戦況を悟った、その時。
「ウォォォォオオン!!!!!」
咆哮が響いた。ケルベロスだ。
「ケルちゃんたち!怖かったわね!大丈夫よ、俺たちが側にいるわ」
ケルベロスが前足でずし、ずしと地面を踏みしめ、もう一度咆哮をあげる。
エキナさんに寄り添うケルベロスーーーその姿は、ゴブリンたちに絶望を与えるのに十分だったようだ。ゴブリンたちはたちまち逃げ帰っていった。




