図体はでかいけど、臆病なの
「……狂戦士ではなかったのか」
「いやだ、誰彼構わず襲いかかるなんて俺には無理よ!図体はでかいけど、臆病なの。俺」
「ケルベロスを素手でのしてたくせに!??お、お前何者だよォ!!!」
「またまた!ケルベロスはきっと別のパーティが倒してくれたのよ、俺は怪我したパーティがいるから向かってくれないか、って頼まれて森に来ただけ。それでパーティはどこかしら…??」
俺と目が合うと、エキナさんは気恥ずかしそうに微笑んだ。仕草だけは本当に少女のようである。
ふと、俺は一つ大事なことを思い出した。
「ねえ、ケルベロスが目を覚さないうちに、魔核を取らないとまずいんじゃ」
「うお!!!そうだ、また目を覚されたらたまったもんじゃねェ!!!何度この化け物が倒すとしても!!!」
「よしてください、俺そんなの無理ですって!!」
「……魔核か、目立つところにあればいいが」
魔核がどこにあるのかは、種族、個体ごとに異なるのでわからないらしい。大体は取りづらいところにある、らしいが。
「なあ吉田!コイツの前足の裏に、肉球っぽいけど肉球じゃない、宝石みたいなのついてる!」
「どけ太っちょ!!それだ」
「これ、どうやって取るの?」
「素手だ」
ティアさんが魔核に触れ、それをしっかり掴むと、勢いよく引き抜いた。俺は思わず目を瞑った。
「アオイ、見ておけ。これが『魔核』だ。これからお前にもやってもらうことになる」
ティアさんの手には、まるで水晶のような塊が乗っていた。不思議なことに、魔核にもケルベロスの前足にも血液らしきものはついていなかった。
「……痛くないの?これ」
「多少の痛みはあるだろうが、これは臓器ではない。魔力を込められた石のようなものだ」
引き抜いた衝撃でケルベロスの体が震えた。目を覚ました奴は辺りを見回し、それぞれの頭は唸り声をあげたり、怯えた声を出したりしていた。
「まあ、あなたおめめがつぶらで可愛い!!怖くないわよ、魔核を取っちゃったからもう大丈夫。人を傷付ける魔法は使えないわ」
「キュ、キューン……」
エキナさんがケルベロスを思い切り抱きしめた。何が起きたか分からずケルベロスは混乱していたが、やがてエキナさんの頬を舐め始めた。
「……ケルベロスって人に懐くんだ……」
「魔核を取れば魔物は襲ってこないのかな?アリッサムくん」
「分かんねえ、こんな光景初めて見たぜェ……俺は死体から魔核を取ったことしか無えからよォ」
「ふむ……これは使えるかも知れん。ケルベロスがこちらの味方になったなら、かなりの戦力にならないか?」
ティアさんの閃きに俺たちは顔を見合わせる。あの『ケルベロス』が仲間になるとすれば。それだけではない、他の魔物も仲間に出来る可能性がある…??
「とりあえず貴方は『ケル』、貴方は『ベロ』、貴方は『ス』ちゃんね。よろしくねーーー三匹とも」
『ス』が可哀想すぎると思ったけど、怖いので黙っておいた。




