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第7話 隠しきれない本音

 気付けばカフェに来てからあっという間に一時間以上が経過していた。今日知り合ったばかりの女子と二人きりでカフェに行っても、緊張しかしないと思っていたが全くそんなことはなかった。間違いなく天音の雰囲気がその要因だと思う。


「お金は本当にいいのか?」


「ええ、今回は私が瑛人を付き合わさせたんだから。それに女の子にだって格好をつけたい時もあるってことよ」


 天音は俺がトイレで席を離れた間に会計を済ませていた。奢って貰うのは流石に申し訳ない気がしたがそこまで言われてしまった以上、気持ちよく奢られた方が天音は喜んでくれると思う。


「奢ってくれたお礼に何かお返しをさせてくれないか?」


「えっ、いいの?」


「ああ、あくまで俺に叶えられる範囲にはなるけど」


 一方的に奢らせるだけで終わりというのは逆に俺が格好悪い気がしたためそう提案をした。すると天音はしばらく黙って考えるような素振りをした後に口を開く。


「……じゃあ、 この後瑛人の家に行ってもいい?」


「えっ……!?」


 天音の口から予想外の言葉が飛び出して俺は思わずそんな驚きの声をあげてしまった。深く考えないタイプは別として、一般的な感覚を持った普通の男性なら多分そんなお願いをされても角が立たないようにしつつも、やんわりと断ると思う。

 だが、俺は天音からのお願いを断れそうになかった。何故なら俺の返答を待つ天音は明らかに不安そうな、何かを恐れているような表情を浮かべていたからだ。

 前回の世界線で勇気を出して幼馴染に告白をした俺も、返答を待っている間は今の天音のような表情になっていたらしい。断ると天音がどんな表情になるかは自分自身がよく知っている。


「分かった、俺の家で良ければ全然大丈夫だ」


「ありがとう!」


 俺の言葉を聞いた瞬間、強張っていた天音の表情は一気にほころんだ。かつての俺は返事を聞いて生気を失ったような表情になっていたらしいので、明らかにそれとは対照的だった。カフェを出た俺達はそのまま俺の家に向かって歩き始める。


「そう言えば天音の家はどの辺りなんだ?」


「私の家は駅前の辺りね」


「ってことは俺の家の割と近所か」


 俺達の住んでいるエリアは学区の境目にある関係でご近所さんとは違う小学校や中学校に行くケースも珍しくない。だから、子供の頃とかに天音とは何かしらの接点があった可能性は普通にありそうだ。

 学校が違う関係で疎遠になって俺が一切覚えていなかったと考えると辻褄も合う。そんなことを考えつつ天音と話しながら歩いていると、突然天音に手を掴まれる。


「急にどうしたんだ?」


「……ごめんなさい、この道には良い思い出がないから迂回しちゃ駄目かしら?」


 そう言われてこれから通ろうとしている場所がどこなのか気付く。そこは俺が一回目の人生で顔も名前も知らない同級生を庇って死んだ場所だった。天音に何があったかは分からないが、ここは俺からしても良い思い出がなんて一切ない場所だ。

 だから天音の提案を受け入れて迂回することにした。この道はいつも通っていた長年の習慣で無意識に足を運ぼうとしていただけで、特にこだわって通っていたわけではない。この道を通れば若干家に帰るのが早くなるくらいのため、迂回したところでめちゃくちゃ遅くなるようなことはないのだ。

 そう言えば俺が卒業式の日に助けたあの子は結局どうなったんだろうか。俺を刺した男はそのまま逃げたため、多分あの子は助かったとは思う。

 進学したのか就職したのかは知らないが、きっと自分の人生を歩んでいるに違いない。今となっては確認するすべはないが、あの子が元気に生きているのであれば俺が命を投げ出して助けたことに意味はあったのだと思う。


「急に遠回りをさせるような形になって本当に申し訳ないわ」


「全然大丈夫だから気にしなくてもいいぞ」


「あそこの道で二年前に初恋だった相手が刺されたから、気分が悪くなっちゃうのよ」


 そう口にした天音は泣きそうな表情を浮かべていた。二周目の世界で今から二年前というと中学生の頃の話だと思うが、そんな事件があったことなんて全然知らなかった。

 もしかしたらニュースや新聞で報道されていたのかもしれないが、当時の俺はその辺りには無関心だったため記憶に残っていないだけの気もする。


「私のせいで巻き込んじゃったから、もう二度と巻き込みたくはないの……」


 そうつぶやいた天音は本当に辛そうな表情を浮かべていた。意識しているのか無意識なのかは分からないが、初恋()相手ではなく初恋()()()相手という言い方をしていることを考えると、その人はもう既にこの世を去っているのかもしれない。流石に女心が全く分からない俺でもその話題にこれ以上触れてはいけないことだけは分かった。

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「俺が命を投げ出して助けたことに意味はあったのだと思う」メチャクチャあったね、今隣にいるもん!
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