第56話 残された謎
ひとまず色々な問題が解決したため、今日のお昼休みは本当に清々しい気分だった。あいつが昼休みや放課後に教室に来る心配が無くなったのだから当然か。だから帰り道の足取りも軽い。
「それにしてもあいつは何で天音にあんなに執着してたんだろうな」
「知らないわよ、そんなの私が聞きたいくらいだわ」
天音は凄まじく迷惑そうな表情を浮かべていた。金髪だった髪を黒髪にして清楚路線に変えたのは、ああいう男が寄ってこないようにするためのはずなだ。
だからそれをすり抜けてあいつが天音に言い寄って来てしまったのは本当に災難だったと言わざるを得ない。
「前回は何で付き合ってたんだ?」
「前回は勝手に一目惚れされて、私の友達経由で紹介してくれってあまりにもしつこかったから仕方なくよ。私に寄って来る男はろくでもないやつばかりだから本当に困るわ」
「あっ、だからゲームセンターで友達と会った時も割と塩対応だったのか」
「ちなみに前回もあの子のせいであいつと付き合うはめになったし、それ以外でもお願いしてもないのに彼氏を紹介してくるタイプだから、もうあんまり関わりたくないのよね」
そういう過去があるなら関わりたくないという気持ちは分かる。もし逆の立場だったとしたら同じようなことを思ったはずだ。
「そう言えばもう一つ大きな疑問があるんだけど」
「何かしら?」
「どうして前回とクラスとかが全然違うんだろうな」
これに関してはバタフライエフェクトの影響でこうなったというのが俺の中での結論ではあったが、もしかしたら天音が何か知っているかもしれないと思い聞いてみることにした。
「あっ、そこは私も不思議に思ってた。前回は瑛人と同じクラスになったことなんてなかったはずなのに」
この反応的に天音にも特に心当たりは無さそうだ。ということはやっぱりバタフライエフェクトの積み重ねと考えるのが一番自然か。
でも、俺達の行動が前回と多少変わったくらいで、ここまで大きな影響があるのかということに関しては正直疑問に感じている。
例えばゴールデンウィークに行った家族旅行で宿泊先が変わったのは、天音が着いてくるという変化が起きてもおかしくない行動があったからだ。
それを考えると、俺や天音の春休みの過ごし方が変わったくらいで、クラス編成が変わるというのは不自然な気はする。
「さっきから黙り込んで何か難しそうなことを考えてるみたいだけど、せっかく色々なことが片付いたんだから今は頭を空っぽにしたら?」
「……そうだな、これ以上考えても意味なんてなさそうだし」
どう考えても結論なんて出そうになかったし、別にそこまでして知りたいような内容でもなかった。
むしろ天音と一緒のクラスになったおかげで前回よりも充実していることを考えると、俺的にはメリットの方が圧倒的に大きい。
「そう言えば瑛人はあの噂の件は知ってるかしら?」
「もしかして転校生の件か?」
「あっ、やっぱり知ってたんだ」
「ここ最近そこそこ噂になってるからな」
どうやら天音の耳にまで入っていたようだ。まあ、俺が最初に耳にした時よりも噂は広がっているため当然か。
「本当なのかは分からないけど、こんな時期に転校してくるなんてかなり変わってるわよね」
「確かにな、時期的にまだ前の高校に入学したばかりのはずだから、もし本当に転校生がいるなら何かしらの訳ありな気がするぞ」
父さんがこの時期も人事異動があるような会社もあると言っていたし、何かしらの事情で単身赴任できない両親の巻き添えで転校してくるというのが個人的にはあり得そうに思っている。
「もし転校生がいるならうちのクラスなんじゃない?」
「何でそう思うんだ?」
「だって、私達の八組だけクラスメイトの人数が一人少ないじゃない」
言われてみれば確かにそうだ。他のクラスは四十人だが、うちのクラスだけ三十九人しかいない。それを考えると、バランス的にうちのクラスになる可能性が高いはずだ。
まあ、もし仮にうちのクラスに転校生が本当にやって来たとしても、俺達が関わる機会なんてそんなに無いとは思うけど。
次話の第57話を持って第一部は完結となります。




