第48話 探りの視線
数日前に放課後のショッピングモールで前世のかたきと天音がエンカウントしてしまうという最悪の出来事こそあったが、あれ以降は遭遇することなく日々が過ぎていた。
あいつと頻繁に遭遇するようなことになっていれば凄まじいストレスを感じていたはずなので本当に有難い。まあ、本音を言えば二度とエンカウントしたくないんだけど。
「ここ最近やけに雨が多くない?」
「梅雨の時期に入ったんだから当然だろ」
お弁当を食べつつ窓の外を眺めながら憂鬱そうな表情を浮かべてそんな問いかけをしてきた天音に対して俺はそう答えた。
この前のショッピングモールへ行った日もそうだったが、梅雨の時期に突入してからとにかく雨の日が増えている。
「そっか、もうそんな時期なのよね」
「ああ、何というか時間が過ぎるのってあっという間だよな」
「ちょっと前に中間テストが終わったような気がするのに、気付いたら期末テストの直前になってそうで怖いんだけど」
「……じゃあ、また一緒にテスト勉強をするか?」
テストの話題が出たため俺は恐る恐るそう提案してみた。天音のことを意識をするようになってからはこんなことくらいでも無駄にドキドキしてしまうから本当に困る。
「そんなの当たり前でしょ、瑛人と一緒じゃないとテスト勉強なんてする気すら起きないし」
「それは問題だろ、もし俺が拒否したらどうするんだよ?」
「えっ、もしかして瑛人は私と一緒に勉強するのを拒否するの?」
俺の言葉を聞いた天音はそんなふうに聞き返してきた。そんな聞かれ方をしたら俺に取れる選択肢なんて一つしかない。そして天音ちょっとニヤついた表情を浮かべているため、間違いなく確信犯だろう。
「いや、それは絶対にしないけどさ」
「じゃあ何も問題ないわね、私のやる気と今回の期末テストの成績がどうなるかは瑛人にかかってるんだから頼んだわよ」
「急にめちゃくちゃ責任重大になって戸惑いを隠せないんだけど?」
「あっ、お泊まり勉強会をやったら私のやる気が一気に二倍くらいになるから、大チャンスって教えておいてあげる」
「いやいや、流石にお泊まり勉強会はもうしないからな!」
あれは線状降水帯が発生して夜遅くまで大雨が続くという致し方ない要素があって実現しただけで二回目なんて想定していない。
そもそもお泊まり勉強会をやってやる気が二倍になるなら、それをせずに勉強時間を二倍すれば結果は同じになるはずだ。
「ちなみに、お泊まり勉強会をしないなら逆に私のやる気は半減するから一気にハードモードになるわね」
「そうなったら天音には四倍勉強して貰うだけだ」
「それは流石に効率が悪いから、やっぱりお泊まり勉強会をするしかないわ」
結局話がそこに戻ってきたため、これ以上何を言っても無駄な気がしてきた。俺の家で勉強をする機会はあると思うが、また何かしらの理由をつけてお泊まり勉強会コースになりそうな気がするから怖い。
「てか、期末テストが終わったら夏休みだよな? 今年はゆっくり出来そうだからマジで嬉しい」
「去年の夏休みはゆっくり出来なかったの? 私は割と遊んでた記憶があるけど」
「夏休みは受験の天王山って言われてるくらいなのにゆっくり出来ないだろ」
「へー、瑛人はそんなに高校受験の勉強を一生懸命頑張ってたのね」
天音のそんな言葉を聞いて俺は自分がやらかしそうになっていたことにようやく気付いた。今の俺にとって去年の夏休みは高校三年生ではなく中学三年生だ。
完全に高校三年生の夏休みのつもりで話してしまっていたため本当に危なかった。二回目の人生が始まってから二ヶ月以上が経過し、慣れてきたからこそ気が緩んでいたのかもしれない。
「……そうなんだよ、高校受験に受かるか心配だったから死ぬ気で勉強しててさ」
「今の学内の成績がそんなに良いのに受かるか心配だったなんて意外ね」
「俺は昔から結構心配性なんだよ」
そんなふうに俺はもっともらしい言葉を口にして誤魔化す。今の内容には特におかしなところはなかったと思うが、何故か天音は俺の顔を注意深くじーっと見てきていた。
ここ最近はコミカライズしてる別作品の更新を集中的にすすめていますが、この作品も合間を見て進めますので引き続きよろしくお願いします。




