第47話 絶望との遭遇
服を見終わった後、今度はゲームセンターにやってきていた。前世では高校に入学してからゲームセンターにはあまり行った記憶がないため、かなり久しぶりに来たような気がする。
ゲームセンター内にも俺達の学校の制服姿が結構いたため、やはり部活が休みで遊びに来ているという考察は間違いないはずだ。現在は天音と二人でエアーホッケーをしている。
「今のはフェイントだったのかよ……!」
「最後まで油断は禁物ね!」
天音はめちゃくちゃ強かったため、俺は次々に得点をいれられていた。天音は長年運動をしていただけあって反応速度や反射神経は明らかに優れていた。
やはり体育の授業くらいでしか運動をしてこなかった俺とは全然違うらしい。やる前は良い勝負になるかなーなんて思っていたが、結果はぐうの音も出ないほどの完敗だ。
「楽しかったわね、次はどうする?」
「……とりあえずエアーホッケー以外で頼む」
「えー、どうしようかしら」
これ以上ボコボコにされ続けるのは嫌な俺がそうお願いをすると、天音はニヤニヤしながらそんなことをあげた。そんなやり取りをした後、今度はクレーンゲームをやり始める。
「全然持ち上がらないんだけど……?」
「……この台は持ち上げるよりも、少しずつ景品を穴に動かして取るのが正攻法みたいだな」
アームの力が弱く全然景品が持ち上がらないことに不満そうな表情を浮かべる天音に対して、俺は周りで同じタイプのクレーンゲームをプレイしている人達の姿を見てそう伝えた。
「なるほど、そもそも戦略が間違ってたってわけね」
「どうする、このまま続けるか?」
「ええ、負けっぱなしなのはくやしいから」
天音が絶対に取ってやるという雰囲気になっていたため、当然俺もそれに付き合う。それから俺と天音は試行錯誤しながら、アームを駆使して景品を動かし始める。
「ここまでくれば後少しで取れそうね!」
「半分くらいは穴に落ちてるし、後何回かやれば多分ゲットできそうだな。ちょっと両替に行ってくる」
百円玉が無くなりそうなことに気づいた俺は少し離れたところにある両替機へと向かう。クレーンゲームに使った金額を考えると、買った方が絶対に安上がりだとは思う。
まあ、こういうゲームは取るまでの過程を楽しむ要素もあるため、それを考えるのは野暮に違いない。両替を終えて戻っていると、手に景品を持った天音の姿が目に入ってきた。
どうやら俺が両替機へ行っていたタイミングで落とすことに成功をしたらしい。だが、その表情は全く嬉しそうではなかった。
一体何故かと思う俺だったがすぐに理由が判明する。天音の近くには二人の男女の姿があり、何やら話しかけられていた。
あまり会いたくない相手だったのかもしれない。そう思う俺だったが男性の姿を見た瞬間、全身に悪寒が走る。
「あいつは!?」
その相手は前世で俺を刺殺した張本人である、奏多先輩と呼ばれている相手だった。一緒にいる派手な女子生徒が誰なのかは知らないが、そんなことはどうでも良い。
居ても立っても居られなくなった俺は天音のもとに駆け寄る。突然の俺の登場に驚く二人だったがそんなことを気にする余裕なんて一切無い。
「ごめんなさい、俺と天音は急いで行くところがあるので!」
俺は天音の手を取るとそのまま走り始める。後ろからは呼び止めるような声も聞こえてきていたが、全て無視して俺は走り続けた。
「もうこの辺りでいいんじゃない?」
天音の言葉を聞いて俺はようやく我に帰る。先程いたゲームセンターはショッピングモールの一番西側にあったが、今俺達がいる場所は最東端のエリアだ。
「ごめん、急にこんなことをしちゃって」
「それは別にいいわ、私も絡まれて面倒だったから」
「……ちなみにさっきの二人は知り合いか?」
ようやく冷静さを少し取り戻し始めた俺は天音にそう尋ねた。先程はとにかくあいつから引き離さないとという一心であの場を離れたが、もしあの二人が天音の顔馴染みであれば面倒だ。
もし卒業式の日に助けた金髪の同級生の正体が天音であれば、付き合っていたことを考えるとあいつと面識があっても全く不思議では無い。
「さっきいた内の女子の方は中学校の頃の知り合いよ。まあ、訳あってあの子とは距離を置いてるんだけど。男子の方は特に知らないわ」
どうやら知り合いなのは派手な女子生徒だけだったようだ。だが、あいつのことを話した時の天音の顔には明らかに抑えきれない激しい憎悪のような感情が浮かんでいた。




