第38話 高まる思い
テスト週間に入ってからクラスメイト達は緊張感を持って過ごしていたが、現在はそんな空気については微塵も感じない状態になっていた。
それもそのはず、先程終了した科目が今回の中間テストでは最後の科目だったからだ。だから手応えがどうであれ、一旦はこれでテストから解放される。それもあって教室内の雰囲気はかなり明るい。
「まあ、みんなのテンションが高い理由は球技大会が近いからってのもあるだろうけど」
球技があまり得意ではない俺的にはテンションの高くなる要素なんてこれっぽっちもなかったが、楽しみに感じているクラスメイトは多い様子だ。実際に教室内でも球技大会の話で盛り上がっているクラスメイトもちらほらといた。
そんなことを考えながら俺は日直の日誌を書いている。今日は日直となっているため日誌への記入に加えて教卓に置かれた提出物を職員室まで持っていかないと帰れない。
「そっか、今日は瑛人が日直なのね」
「ああ、だからもう少しだけ待ってくれ」
「全然急がなくても大丈夫、別に急いで帰らないといけないような用事とかはないから」
日誌を書いていた俺の姿を見た天音はそう言葉をかけてきた。今の言葉もそうだが天音は本当に細かい気遣いがめちゃくちゃ上手いと思う。
だから余計に俺以外に対して塩対応なのかが不思議で仕方がない。そんなことを考えつつ俺は手を動かして一気に日誌を書き切った。
そして教卓の上に置かれていたノートや問題集のような提出物を手に持った俺だが、天音が上から半分くらい持っていく。
「このくらいの量なら別に俺一人でも大丈夫だぞ」
「でも私が半分くらい持った方が瑛人の負担は減るでしょ?」
「確かにそれはそうだけど」
「遠慮なく私に甘えてくれていいわよ」
「じゃあお願いしようかな」
そう言ってくれたため素直に頼ることする。流石に今の言葉を言われて、それでも自分だけでどうにかしようとは思わなかった。それから俺と天音は二人で職員室へ向かって歩き始める。
今日で中間テストが終わったということもあって、放課後遊びに行く予定を話していたり、これから部活に行こうとしている人がいるなど、校内もテスト終わりの開放感に包まれている様子だ。
「そう言えば天音はテストはどんな感じなんだ?」
「個人的には前よりも手応えがあったような気がするわね」
「前より?」
天音の言葉に違和感を覚えた俺はそう聞き返した。すると天音は一瞬だけハッとしたような表情を浮かべた後、口を開く。
「言葉足らずだったわね、復習テストよりって意味よ」
「あっ、なるほど。そういうことか」
確かに前と言えばタイミング的には入学式の翌日にあった復習テストしかない。そして復習テストよりも手応えがあったということは、前回の順位よりも高い可能性が普通にある。
天音の復習テストの順位は四十七位であり、もしもそれよりも良い結果になるのであれば学内では間違いなく成績上位層だ。
めちゃくちゃ容姿が整っており、運動も出来る上に成績も良いというのはあまりにもハイスペック過ぎやしないだろうか。
「そういう瑛人はどうなの?」
「俺も手応えはかなりあったぞ、ケアレスミスさえなかったら満点近く取れた自信がある科目もあるし」
「へー、いいじゃない。これも私と一緒に勉強をしたおかげかしら?」
「それもある、実際に数学は図書室で天音からミスを指摘してもらったところが今回もテストの問題で出てたし」
あれのおかげで今回は頭を悩ませることもなく、すんなりとクリア出来た。だから天音と一緒にやった勉強会は無駄ではなく、むしろめちゃくちゃ役に立ったと言える。
「そっか、それなら私も頑張ったかいがあったわね」
「ああ、天音のおかげで本当に助かった。ありがとう」
俺がそうストレートに感謝の言葉を伝えると、天音は嬉しそうな表情を浮かべた。そんな天音の表情にドキドキさせられた俺は悟られないように平静を保とうとしたが、果たして上手くいっているだろうか?




