第34話 さりげない気遣い
テスト週間に入ってからあっという間に数日が経過し、土曜日がやってきた。中間テストは来週の月曜日からとなるため、今日と明日は直前の土日となる。だからこの二日間はガッツリと勉強をする予定だ。
「おはよう、瑛人。今日も来てやったわよ」
「ああ、おはよう」
目覚めた俺がダイニングに用意されていた朝食を食べていると、いつもの挨拶を口にしながら私服姿の天音がやってきた。もはや天音がうちにいることに一切違和感がなくなったため、人間の慣れって本当に怖いと思う。
「今日は私がしっかりお世話してあげるから喜びなさい」
「別にそんな大層なことはしてくれなくて大丈夫だぞ」
「おかあさまから頼まれた以上はしっかりと面倒を見てあげるわよ」
この土日の間、県外にある母さんの実家に行っているため両親は不在だ。そして母さんは自分がいない間、俺の面倒を見るよう天音にお願いをしてしまった。
俺が小さい子供ならともかく、もう高校生なのだから絶対に必要ないと思うのだが、天音はノリノリな様子なので帰れとも言えない。でも天音と一緒に勉強をしたいとは思っていたし、そういう意味ではちょうど良かったと思う。
「ちなみに今日のお昼ご飯のリクエストはあるかしら? 私が作ってあげるわ」
「大変だと思うからそこまでしなくても大丈夫だぞ、今日は普通に出前を取ろうと思ってたし」
「料理するくらいそんなに負担じゃないから大丈夫よ。あっ、でも楽をしたいから瑛人にも手伝って欲しいわね」
「それなら喜んで協力する」
天音一人に作らせるのは流石に申し訳なかったため、手伝う形の方が俺は良かった。それから午前中の間は二人でしっかりとテスト勉強を行い、正午になったタイミングで近所のスーパーへと買い出しに出発する。
「そろそろお昼ご飯のリクエストは決まったかしら?」
「ああ、結構迷ったけどオムライスで頼む」
「オッケー、私に任せなさい」
テスト勉強をしながら何にするか候補を話し合っていたが、最終的に俺はオムライスを選んだ。他に出ていた候補は普段のお弁当で食べたことがあったため、それがオムライスを選んだ決定打になった。
スーパーに到着した俺達は早速オムライスの材料を探し始める。家の近くにあるスーパーだが食材は全然買ったことがないため、どこに何が置かれているのかはあまり分からない。だが食材を買い慣れているらしい天音はその辺りをしっかりと把握していた。
「こうして二人で食材を買いながら歩いていると新婚夫婦って感じがしない?」
「き、急に何を言うんだよ!?」
突然天音がそんなことを言い始めたため、俺は思わず取り乱しながらそう口にした。ただでさえ一緒にいるだけでドキドキしてしまうのに、そんなことを言われると心臓に悪いため勘弁して欲しい。
「瑛人的にはどう思う?」
「……見えるとしたら夫婦よりもカップルとかじゃないか?」
「へー、瑛人はカップルになら見えると思ってるんだ」
「い、今のはあくまで例えだからな」
ニヤニヤした表情を浮かべながら話しかけてくる天音に対して、俺は相変わらずしどろもどろになりながらそう答えるしか出来なかった。多分今の俺は顔が赤くなっていると思う。
以前の俺ならカップルではなく同級生と答えていたと思うし、もしかしたら無意識のうちに願望が出てしまったのかもしれない。やはり天音に惹かれているのは疑いようのない事実だろう。
そんなやり取りをしている間に必要な食材を全て集め終わったため俺達はレジに並ぶ。そして会計を終えて食材を袋詰めした後、俺は両手でマイバックを持つ。
「袋は俺が家まで持つから任せてくれ」
「一人だと重いんじゃない?」
「これくらい大丈夫だ、それにさっきから頼りっぱなしだから俺も少しは役立つところを見せたいとは思ってたからな」
「じゃあ瑛人に任せようかしら。でも重くなったら片方は持ってあげるから遠慮なく言ってくれたら大丈夫よ」
天音は俺に任せる方針を取りつつも、困ったら助けると言ってくれたため、本当に人を立てるのが上手いと思う。もしクラスメイト達とちゃんと関わっていれば人気者になっていてもおかしくなかったはずだ。
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