第31話 認識のズレ
昼休みが終わってからあっという間に時間が過ぎ、ついに放課後がやってきた。放課後からいよいよテスト週間に突入するため、どこの部活もテスト終了までは活動停止となり、職員室への入室も出来なくなる。
俺の場合は部活に入ってないためその辺りは関係ないが、職員室に何かを持っていくようなことがたまにあることを考えると注意は必要だ。
「天音のこの後の予定は?」
「特に無いわね、せっかくの週末だからどこかで遊んで帰りたい気分ではあるけど」
「いやいや、テスト週間なんだから勉強しろよ」
遊ぶ気満々な天音に対して俺はそうツッコミを入れた。復習テストの結果が想像以上に良かったため真面目に勉強をするのかと思いきや、そうではなかったらしい。
「ちゃんと夜には勉強するわ、ノー勉で中間テストを受けるつもりはないし」
「ノー勉で受けるやつなんていないだろ」
前世では学生生活が長くなるにつれてそういう同級生もチラホラと現れてはいたが、流石に一年生前期の中間テストをノー勉で受けるようなチャレンジャーは誰もいなかった。
「ちなみに俺は図書室で勉強をしてから帰ろうと思ってるけど、天音はどうする?」
「もちろん付き合うわ」
「即答だな、遊んでから帰ろうとしていた人間の発言とは思えない気がするんだが?」
てっきり嫌がって帰るかもしれないと思っていたため、あまりの変わり身の早さに俺は天音に疑いの視線を向けながらそう問いかけた。
「だって瑛人からは目を離せないじゃない、私がいない間に誰かから手を出されても困るし」
「いやいや、そんなに恨みは買ってないだろ」
確かに悪目立ちはしているが、暴力沙汰に巻き込まれるほど嫌われてはないはずだ。それにうちは県内でもかなり偏差値が高い高校となっているため、前世も含めてそういう事件は全く聞いたことがない。
「ってわけで瑛人が図書室に残るなら私も残るわ」
「じゃあせっかくだから一緒に勉強しよう」
ひとまず放課後の方向性が決まったため俺達は教室を出て図書室へと向かい始める。部活がないということもあって昇降口付近には帰ろうとしている生徒達がかなりの人数いた。学校を出た後はファミレスやカフェ、自分の家などで勉強をする人が多いと思うが、先程の天音のように遊ぼうとしている人も一定数いるとは思う。
不真面目な層は良くない結果になるパターンがほとんどだが、授業だけで全て理解出来るためわざわざテスト勉強なんてしないという天才タイプも一部存在しているのは知っている。言うまでもなく俺はそう言うタイプではないため、真面目に勉強をしなければならない。
「放課後の図書室って意外と人がいるわね」
「テスト週間だから普段よりは多いと思うぞ、俺みたいに学校の図書室で勉強した方がやる気が出るって人もいるだろうしな」
ちなみに現在図書室にいる人達はみんな教科書やノート、問題集を開いており、読書をしているような生徒は誰もいなかった。そんなことを考えながら俺達は空いていた席に座り、先程あった帰りのHRで発表された中間テストの範囲に沿って二人で勉強をし始める。
「あっ、その単語を使うと全然違った意味になるわ。使うのはこっちね」
英作文の問題を解いていると天音はそんな言葉を口にして、ノートの空いていたスペースにシャーペンで英単語を書き込んだ。自分の書いた内容と天音が書き込んだ英単語を見比べてようやくミスに気づく。
「……本当だ、ありがとう」
「そこはみんなよく勘違いをしやすいところだから要注意よ」
もしかしたら天音の復習テストの順位は幸運が重なった結果なのかもしれないと勝手に思ったりしていたが、先程の解説を聞いて実力で勝ち取った成績だと確信した。そうでなければあんな解説は絶対に出来ないはずだ。もしかすると天音は天才タイプ寄りなのかもしれない。




