第27話 本音の失言封じ
アスレチックをクリアした俺達は、昼食を済ませて次の目的地へと移動を開始する。疲労困憊状態の父さんに運転させるのは怖かったため、母さんが運転してくれて安心だ。
せっかく人生をやり直す機会を得られたというのに、こんなところでゲームオーバーになんてなりたくなかった。バッドエンド後に逆行した場合はハッピーエンドになると相場が決まっているはずだ。
「そろそろ着くわよ」
母さんの言葉に反応して窓の外を見ると大型旅館や観光案内所が存在する、和風でレトロな雰囲気のエリアが広がっていた。今回の家族旅行の最後の目的地である温泉街はもうすぐだ。
西日本にある温泉としてはトップクラスの人気を誇り、外国人からも非常に人気が高いんだとか。駐車場に到着して車から降りた俺達は温泉街を歩き始める。アスレチックの疲れを日帰り温泉で癒してから帰るプランだ。景色を見ながら歩いていると隣にいた天音が話しかけてくる。
「お昼を食べる前は結構疲れたような顔をしてたけど、ちょっとは元気になったみたいね」
「ああ、まだ十代だから流石に父さんとは違う」
俺はまだ若いため回復は圧倒的に早いが、四十代の父さんはそうもいかないようで、アスレチックが終わってからずっと顔が疲れていた。
ちなみに同年代なはずの母さんはピンピンしていたため、そのくらいの年齢になると日頃から運動しているかどうかでだいぶ変わるに違いない。歩き始めてから少ししてモダンな外観の建物の前に到着した。
ここは外湯の中でも非常に人気のようで、前回の家族旅行でも来た記憶がある。中に入った俺達は靴を脱いで券売機でチケットを購入した。事前に調べていた金額よりも少し高かったらしいので、ゴールデンウィーク価格になっているのかもしれない。
「じゃあ私とおかあさまはこっちなので」
「あっ、くれぐれも女湯を覗こうとしたら駄目よ」
「この歳で社会的に死ぬ気なんてないから安心してくれ」
母さんがいつものノリで絡んできたため俺はそう返した。そんなことをしてしまったら前回とは別のバッドエンドを迎える未来しか見えない。二人と別れた後、父さんと一緒に男湯と書かれたのれんをくぐり抜け、脱衣所で服を脱いでから浴室に入る。
洗い場でしっかりと体を洗ってから湯船に向かうと、赤茶色のお湯が目に入ってきてちょっと驚く。そう言えば前回も全く同じリアクションをしたっけ。湯船に浸かってまったりしていると先程の母さんの言葉を思い出す。
「……女湯を覗こうと思っても絶対に無理だろ」
男湯と女湯を隔てる壁は俺の身長の倍以上は余裕であった。この高さの壁を周りにバレないようにしながら乗り越えて覗きを成功させられるビジョンが全く見えない。満足するまで湯船に浸かった俺はまだしばらくは動きそうにない父さんを残してひと足先に浴室から出る。
髪を乾かした俺が自動販売機コーナーに向かっていると天音と遭遇した。ほんのりと顔が赤いことを考えると湯船から出たばかりなのかもしれない。つい天音の顔に見惚れていると恥ずかしそうな表情で口を開く。
「……メイクを落としてすっぴんの状態だから、あんまり見つめないで欲しいわね」
「別にメイクなんかなくても綺麗な顔だと思うけどな……」
俺は何も考えずに素直な感想を口にしたが、すぐにめちゃくちゃ恥ずかしいことを言ってしまったことに気付く。今のセリフはイケメンしか許されないため、完全にやらかしてしまった。
「私に対してだから大丈夫だったけど、今みたいな言葉は他の女子には絶対に言っちゃ駄目よ」
「そうだな、よく肝に銘じておく」
天音以外の女子に先程のようなことを言ったらセクハラ扱いされて吊し上げられてもおかしくない。そもそもこんなふうに話せる女子は天音しかいないが、今後のことを考えると注意が必要だ。
瑛人が余計な発言をして万が一にも他の女子とフラグが立つ可能性を徹底的に排除しようとしている模様
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