第28話 自覚後の一時停止
温泉で癒された後、俺達は家に向かって帰り始めていて現在はサービスエリアで休憩中だ。旅行の行き先は前回とほぼ同じだったが、天音がいたおかげで今回の方が楽しかったように感じている。
「地面にあるこれって何だったかしら? 何となくは分かるんだけど……」
「これは太陽の光でできる影の位置を利用して時間を見る日時計だな」
「ありがとう、喉元まで出かかってたからすっきりしたわ。でも、何でサービスエリアにあるのかしら?」
「標準時子午線が通る街だからシンボルとして日時計が設置されたらしいぞ」
天音の疑問の言葉に対して俺はそう答えた。ちなみに俺も前回同様の疑問を持ち、父さんに同じ質問をした記憶がある。だから今回答えを知っていたというわけだ。
「瑛人って本当に色々知ってるわね」
「今回についてはたまたま知ってただけだ」
そんな話をしながら俺と天音は高台の方へと登っていく。そこから景色を眺めると遠くの方にある海峡大橋まで見えた。距離がある関係でここからだと天気の良い日にしか見えないらしいので、夕焼け色に染まった海峡大橋まで見られたのはラッキーだ。
「今回の旅行は楽しかったわ、ありがとう」
「その言葉は父さんと母さんに言ってあげたら喜ぶと思うぞ」
特に天音を旅行に誘った母さんが一番のMVPだと思う。そもそも俺には天音を家族旅行に誘うなんて発想すらなかったわけだし。
「おとうさまとおかあさまだけじゃなくて瑛人にも感謝してるわよ?」
「特に感謝されるようなことなんてしてなかったと思うけどな」
「私にとっては瑛人は一緒にいてくれるだけで感謝の対象だから」
「どういう意味なのかはちょっとよく分からなかったけど、とりあえず褒め言葉として受け取っておくぞ」
少なくとも天音が本当に感謝してくれていることだけは分かったためそう答えた。一周目の高校生活は青春のかけらすらない灰色の人生だったため、二周目の今とは本当に大違いだったと思う。二周目の人生がこんなにも色付いているのは間違いなく天音のおかげだ。
昨日天音から密着された際に他の男子には同じことはしないで欲しいと考えてしまったのは、好きになってしまったからとしか思えない。一緒にいるだけでこんなにも幸せを感じているのだから間違いないはずだ。ただし、今この場で告白をできるかと言われるとそれは難しい。
俺は同じような気持ちになって陽葵に告白をした結果、失敗をした苦い思い出がある。天音から好意のようなものを向けられていることには流石に気付いているが、果たしてそれが本当に正しいのかは恋愛経験が全くない今の俺では判断できない。
昨晩の料理を一生作ってあげる発言もそうだが、天音の距離感は色々とバグっているため、そういう意味として捉えて大丈夫という確信が持てなかった。もし、告白して振られた際に受ける心理的ストレスは計り知れない。恐らく陽葵に振られた時とは比べものにならないくらい深刻なダメージを受けるはずだ。
「さっきから急に黙り込んでどうしたの……?」
「……あっ、ごめん。ちょっとゴールデンウィークの課題のことを考えてて」
「せっかく楽しい気分になってるときに嫌なことを思い出させないでよ!」
「でも目を背けられない現実じゃん」
「それはそうだけどさ……」
憂鬱そうな表情にさせてしまったが、上手く誤魔化すという目的は果たせた。天音とはめちゃくちゃ密度の濃い時間を過ごしてきたが、まだ俺達の関係は一カ月ほどでしかない。だから焦って結論を出す必要はないと思う。
「綺麗な景色も堪能できたことだし、車に戻りましょうか」
「天音はお手洗いとかは大丈夫そうか? 高速道路はまだ結構長いけど」
「ええ、私は大丈夫よ。瑛人の方は問題ないかしら?」
「ああ、俺はさっき済ませたから」
「じゃあ行きましょう」
俺と天音は高台から降りて車に向かって歩き始める。自分の気持ちをはっきりと自覚してしまったせいか天音の顔を見るのがちょっと恥ずかしかった。
だからその後の車の中での口数は少なくなってしまったが、特に天音はそこにツッコミをいれてくることはなかったため、疲れているからだと思ってくれたのかもしれない。こうして一泊二日の家族旅行は幕を閉じた。
瑛人君でも流石に天音から向けられているただならぬ気持ちには気付いていますが、それの正体が激重感情だと気付くのはまだ先です
第18話から続いた第2章は以上で終了です、ここまでありがとうございました!
第29話からは第3章となり、学校のエピソードに戻ります。色々と動きのある章になる予定なので、お楽しみに!!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!




