第23話 確信犯の匂わせ
観覧車を降りた後、俺達は宿泊先のホテルにやってきた。ホテルは海のすぐそばに立地しており、先程までいたエリアからは徒歩数分ほどの距離にあったため、移動時間はほとんどかかっていない。
「ゴールデンウィークで予約も集中してたと思うんですけど、よくこんないい場所が取れましたね」
「ちょうどキャンセルになった部屋があったのよ」
「最初に予約しようと思ってたところと比べると値段はかなり張ったけど、それに見合うホテルだと思うぞ」
そんな会話をしている三人を見つつ、俺はちょっとだけ驚いていた。その理由は一周目の家族旅行の時とホテルが違ったからだ。
前回は少し離れた場所にあるホテルに泊まった記憶があり、間違いなくここではなかった。観覧車とは違って天音がこのホテルに泊まりたいというとは思えなかったため、一体何が要因となって前世と変わったのか不思議に思っていたが、すぐに理由が判明する。
「最初に泊まろうとしてたホテルだと二部屋予約出来なかったから、ちょっといいタイミングでこの部屋が見つかって良かったわ」
家族旅行に天音がついてきたことによって前世とは部屋の都合が合わなくなったことが原因だったらしい。つまり前回とは違う選択肢を取らなければならない事態になったため、変化したというのが答えだろう。
「私としては全然同じ部屋でも良かったんですけど」
「流石に嫁入り前の娘を、こんなおじさんと一緒の部屋で寝させるにはいかないわ」
「おいおい、俺はこんなおじさん扱いなのかよ」
母さんは父さんを指差しながら面白おかしく天音に説明していた。でも部屋を分けるという選択肢は正解だと思うし、逆にそれ以外はあり得ない。
天音は同じ部屋でも良いという距離感がバグっているとしか思えない発言をしていたが、まともな倫理観を持っている大人であれば絶対に部屋を分けるはずだ。
「私は瑛人と同じ部屋ですか?」
「そんなわけないだろ、それは流石に駄目だから!」
「別にいいじゃない、何も減るようなものはないんだし」
「天音ちゃんは私と一緒よ、前々から二人きりでゆっくりガールズトークをしたいと思っていたからね」
天音は相変わらずおかしなことを言っていたが、母さんの発言を聞いて大人しく引き下がった。悪ふざけやいたずらをするのが好きな母さんだが、相手に不快感を与えないように配慮しつつ別の選択肢へ誘導するのが上手いと思う。
父さんに似て鈍感だったり空気が読めないことがたまにあるような俺とは違い、母さんに関してはそういう部分は一切なかった。その辺りが遺伝して欲しかったと思ったことは一度や二度ではない。それからフロントでチェックインを済ませて部屋に荷物を置いた後、上層階にあるレストランへと移動する。夕食はバイキング形式となっていた。
「洋食や和食、中華まで何でもあるわね」
「これだけあると迷うよな」
グレードの高いホテルということもあって種類が豊富な上にどれもめちゃくちゃ美味しそうだから困る。俺と天音はそれぞれ好きなものをトレイに乗せていく。俺は洋食系を中心に取っていたが、天音はお寿司など和食をトレイに乗せていた。やっぱりバイキングって個性とか性格が出るよな。
「瑛人は揚げ物系が好きなの?」
「ああ、結構好きだと思う」
俺のトレイには唐揚げやフライドポテト、エビフライなど揚げ物が数多く乗っていた。特に意識せずに取っていたが、確かにこれを見たら揚げ物が好きに見えてもおかしくない。実際に好きなわけだし。
「ふーん、瑛人が作って欲しいっていうなら私が作ってあげるわよ」
「えっ、天音って料理できるのか!?」
「意外って言われることが多いけど、料理は一通り出来るのよね」
思わず声を上げてしまった俺だが、天音の今の反応を見る感じだと驚かれることには慣れているらしい。俺もそんなキャラではないと思っていたし、実は天音が家庭的という意外な一面が明らかになった瞬間だった。
「だから瑛人のために私が一生作ってあげてもいいわ」
「……えっ?」
突然そんな言葉を口にしたため俺は間抜けな声を出してしまった。果たして今の言葉にはどんな意図があったんだろう。天音のワードチョイスは結構独特なため深い意味はない可能性もあったが、夕食を終えて入浴し、寝る直前になってもとにかく頭から離れなかった。
なおそのままの意味で幸せな家庭を作って一生添い遂げる気満々な模様
家族旅行の話はもう少し続きます、読んで面白いと思って頂けたら、ブックマークと現状の評価で大丈夫なので
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