第22話 後出しジンクス
あっという間に一時間が経過し、観光遊覧船によるクルーズは終了となった。二人で撮った写真をプロフィール画像に設定されるなどのトラブルもあったが、クルーズは楽しく景色も綺麗だったため大満足だ。
その後はショッピングモールで買い物をしたり、ポートタワーの観光をしたりと、複合施設内のあちこちを回っているうちに周囲がオレンジ色に染まり始めていた。だんだんと日が暮れ始めており、時間帯は夜になりつつある。
「もうこんな時間か」
「一日ってあっという間ね、普段の学校も同じならいいのに」
「天音って基本的に授業嫌いだもんな」
そんな話をしながら歩いて向かっている進行方向には夕日に照らされた観覧車があった。今日はこの観覧車を最後に宿泊先に移動する予定となっている。ちなみに前回は観覧車には乗っていなかったため乗るのは俺も今回が初めてだ。
今回観覧車に乗ることになったのは天音が乗りたいと言い始めたからだったりする。俺がバタフライエフェクトに感じていることは、こういう前世にはなかった出来事の積み重ねによって生じているのかもしれない。それから四人で順番待ちを始め、ようやく俺達の番が来る頃にはすっかり薄暗くなっていた。
「あっ、私はパパと二人で乗るから」
「えっ、どうせなら四人での方がいいんじゃ……」
「……あなたはもう少し気が利くようになった方がいいと思うわ、ってわけだから天音ちゃんと二人で楽しんでね!」
母さんはまだ何か言いたそうにしていた父さんの手を掴んでそのままゴンドラに乗り込んだ。そんな父さんと母さんの様子を見て天音はくすくすと笑い始める。
「おとうさまとおかあさまって本当に仲がいいわよね」
「そうか?」
前世も含めた今までの人生で父さんと母さんの姿は毎日のように見てきたが、見慣れ過ぎているせいか特別仲がいいようには感じていなかった。むしろ、空気が読めないような発言をする父さんを、母さんがたびたび詰めている印象があまりにも強い。
「お互いのことを心の底から信頼していないとあんなふうになれないと思うわ」
「そっか、俺は慣れているから気づかなかったけど天音の目にはそういうふうに映ってるんだな」
「私としては理想の夫婦って感じね」
「確かに冷めきった家族もいる中、こうして家族旅行にも来てるんだから仲はいいのは間違いないか」
俺の言葉を聞いていた天音は満足そうな顔でうなずいていたが、突然人が変わったかのように真面目そうな表情になる。
「だから、おとうさまとおかあさまには今度こそ幸せになって貰いたいわ」
天音が口にした言葉の意味はよく分からなかったが、その顔は真剣そのものだった。父さんや母さんとは異様なほど仲が良いと思っていたが、もしかして天音は俺の知らないところで何か関わりがあったりするのだろうか。そんなことを考えていると天音はハッとしたような表情になる。
「ごめんなさい、ちょっと自分だけの世界に入ってたわ。私達も行きましょう!」
そう言って天音は俺の手を取った。父さんと母さんが乗り込んでからまだ三十秒くらいしか経っていないが、もう次のゴンドラが乗降口付近まで来ていたらしい。俺と天音はゴンドラに乗り込み、そのままゆっくりと上昇し始める。
「ライトアップされた景色がめちゃくちゃ綺麗だな」
「そう思って観覧車を最後にしたのよ」
「確かに明るい時間帯よりも暗くなってから乗る方が間違いなく良かったと思う」
そう口に出してしまうくらいにはゴンドラの外に広がる夜景は綺麗だった。前回はこの景色を見ることはなかったため、観覧車をチョイスした天音には感謝だ。
「そう言えばここの観覧車にはとあるジンクスがあるんだけど瑛人は知ってる?」
「えっ、全然知らないんだけど一体どんなジンクスがあるんだ?」
「乗る瞬間に手を繋いでいた二人は、未来でもまた一緒に乗ることになるんだって」
「そっか、じゃあ父さんと母さんはまた一緒に乗るってことか……って、あれ?」
そう言えば俺達も乗り込む時に手を繋いでいた気がする。それを思い出した瞬間、俺の顔は急激に熱を帯びたような感覚になった。だが、天音は涼しそうな顔をしていたため、今の言葉をさほど意識していないのかもしれない。
なお天音は涼しい顔をしているのはがわだけで、内心はバクバクな模様




